GREENITY IWATA
ホテル・旅館 - 静岡県 磐田市
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9月最後の週末の土曜日。
本来なら澄み渡る秋空を期待していたけれど、この日は厚い雲に覆われていた。空一面に広がる灰色は、少しだけ心の色にも似ていて、明るさよりも落ち着きを与えてくれる。雨が降る気配はなく、ただ静かに雲が流れている。そんな曇り空の下、私はグリニティイワタへと足を運んだ。
本日の男湯はDaichi。黒く直線的な浴室は、その曇天と呼応するように、凛とした静けさをまとっていた。ガラス越しに見える灰色の空が、浴槽の湯面に映り込み、どこか絵画のような静謐さを感じさせる。
浴室に入ると、まずモール泉の深い黒に目が吸い込まれる。
湯に身を沈めると、肩から足先までじんわりとほぐれていく。窓越しに差し込むわずかな光が、湯の表面でやわらかく揺れ、その反射が壁に映っていた。晴れの日とは違う静謐な空気。曇り空が広がるからこそ、湯の温もりが一層際立ち、日常に寄り添うような安心感をもたらしてくれる。
次にサウナ室へ。
扉を開けると、いつもと変わらない音のない世界が広がっていた。3段のベンチの最上段に腰を下ろすと、じわりと熱が体を包み込み、額から汗が流れ落ちる。無音の中で、ただ自分の呼吸と鼓動が響く。曇り空を思い浮かべながら、過ぎ去った一週間を反芻する。特別な出来事はなくても、積み重ねてきた日々が心を支えている。サウナの熱は、その小さな出来事に光を当ててくれるようだった。
十分に汗をかいたあと、水風呂へ。
地下水の冷たさが全身を包み込み、頭の中まで一気に冴えていく。曇天の重さとは対照的に、透明な水の冷涼感が身体を軽くする。日常の疲れやもやもやを一気に洗い流してくれるようで、その瞬間だけは雲間から光が差し込んだかのようだった。
そして露天へ。柔らかい寝そべり椅子に体を委ね、空を見上げると、厚い雲がゆっくりと流れている。
虫の声が微かに響き、風が頬を撫でる。曇り空には晴天の華やかさはないけれど、その分、静けさが深く心に沁みる。外気浴のひとときは、まるで時間がゆっくりと流れ出すかのようで、胸の奥にある重さを静かに解きほどいていった。
湯、サウナ、水風呂、風。
その繰り返しは、派手な変化を求めず、ただ淡々と自分を整えていく営みだ。厚い雲に覆われた空の下で過ごした時間は、特別な輝きこそないけれど、確かな落ち着きを与えてくれる。
9月の終わり、曇り空に包まれながら交わした小さな自分との対話は、これからの暮らしを支える静かな灯になっていくのだろう。
以上
男
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