とうえい温泉 花まつりの湯
温浴施設 - 愛知県 北設楽郡東栄町
温浴施設 - 愛知県 北設楽郡東栄町
雨模様の日曜日。灰色の雲に背中を押されるように車を走らせ、向かった先は愛知県奥三河の山あいに佇む「とうえい温泉 花まつりの湯」
静岡県との県境付近、信号よりも木の数のほうが多そうな場所だ。初訪問だが、不思議と「ここは正解」という予感があった。
館内に一歩足を踏み入れると、木の香りがふわり。
木質感たっぷりで温かく、都会のスーパー銭湯にありがちな“キラキラ感”は皆無。その代わりにあるのは安心感だ。入浴料は大人800円。財布にも優しく、山にも優しそうで好印象である。
浴室へ入ると、いきなり目に飛び込んできたのは内湯の鬼の口。そこから勢いよく湯が注がれている。鬼なのにサービス精神が旺盛で、湯量もケチらない。
身を清め、まずは露天の源泉へ。奥三河の自然に囲まれ、空気がやたらと美味しい。これが噂のマイナスイオンかと、深呼吸を一つ。肺が喜んでいるのが分かる。
露天には壺湯と寝湯、2種類の源泉の温泉。
無色透明で43℃の熱めな湯は、入った瞬間に血管が一斉に目を覚ます感覚がある。"効いてる感"が分かりやすい。
対するクリームがかった黄金色の少しぬるめな湯は、油断すると永遠に出られないタイプ。
交互に浸かっている内に、完全に山の一部になった気がしてきた。
サウナ室は浴室内にあり、板張りの山小屋仕様。
3段ベンチで、室温計は90℃弱。数字だけ見れば穏やかだが、遠赤ストーブの熱がじわじわと芯に効く。テレビも音楽もなく、聞こえるのはストーブの低い唸り音と、時折落ちる汗の気配だけ。利用者は多いのに静かで、ここでは誰もが“黙って蒸される大人”になっている。
十分に蒸された後は、すぐ隣の水風呂へ。
水深90cm、表示は16℃。深さがある分、入水時は少し勇気がいるが、肩まで沈めた瞬間、まろやかな水が全身を包み込む。冷たいのに優しく、刺さらない。呼吸が整い、思考が一気に単純化され、「ああ、今、生きてるな」という感想だけが残る。
休憩は浴室内のベンチで。背もたれからお湯が流れる仕様で、冷えた背中をすぐにフォローしてくれる気配り設計。
サウナ→水風呂→温かい背中。この導線が完璧で、注がれる湯の音が祝福のBGMに聞こえてくる。
風呂上がりは「山のれすとらん さかた」へ。錦爽鶏御膳を注文。鶏の炊き込みご飯は湯気と一緒に香りが立ち、焼鳥は香ばしく、唐揚げは驚くほどジューシー。棒棒鶏サラダで口を整えつつ、気づけば無言で食べ進めていた。サウナ後の身体に、この鶏のフルコースは反則級だ。
とうえい温泉、サウナも水風呂も温泉も、全部が実直で裏切らない。
気づけば「また来る理由」を考える必要もなく、答えはもう身体が覚えていた。ここは、ちゃんと心と体が笑う温泉だった。
以上
男
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