黄金湯
銭湯 - 東京都 墨田区
銭湯 - 東京都 墨田区
1. サウナ室 — 静寂の熱
サウナ室の扉を開けた瞬間、世界が音を失った。
黄金湯のヒバ材の壁が放つ木の香りと、やわらかくも芯のある熱気が体を包み込む。
朝イチの時間帯だからか——誰も話さない。
オートロウリュの「パチ…」という音と、熱気が空気を押すような低い唸りだけが、
静かな空間の奥底で鳴っている。
視界は柔らかな間接照明に照らされ、明暗が穏やかに揺れている。
目を閉じると、自分の鼓動と呼吸の音しか残らない。
熱はじわじわと肌を押し、額から落ちた汗が頬をつたってタオルへ吸い込まれる。
時間の感覚は溶け、ただ「熱と静けさの中にいる」という事実だけが存在する。
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2. 水風呂 — 目覚める冷たさ
静かに立ち上がり、サウナ室を出る。
足元のタイルを踏みしめながら水風呂へ向かう道のりは、なぜか儀式めいて感じられる。
身体が熱で火照りきったその瞬間、深く構えた水風呂へ一気に身を沈める。
地下水を使った軟水は、刺すような冷たさではなく、肌を優しく包み込む「なめらかな冷」。
冷却が皮膚から血管、そして全身の芯へと染み渡っていくのがわかる。
耳の奥まで澄み切るような感覚が訪れ、思わず息を整える。
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3. 外気浴 — 時間の溶解
水から上がり、外気浴スペースの椅子に腰掛ける。
朝の墨田区の風が、熱を帯びた肌をそっとなでる。
空を見上げると、黄金湯の煙突の先端がうっすら朝日に照らされている。
心拍が落ち着くにつれ、頭の中が空っぽになり、意識が遠のく。
「ととのう」という言葉は、この瞬間のためにあるのだと改めて思う。
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黄金湯のサウナは、
熱・冷・風の三拍子が揃った「静寂のセッション」。
一度味わえば、また早朝に来たくなる——そんな体験だった。
男
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