たきれん

2025.11.21

1回目の訪問

出張の夜、時計は22時を回っていた。
静かな駐車場に車を停めると、福壽観音がこちらを見守るように立っている。旅の終わりにこうした存在が迎えてくれるのは、不思議と心がほどけるものだ。

館内へ入り、靴を箱に納め、フロントで受付を済ませる。
とりあえず一周してみると、夜も更けているせいかレストランはすでに灯りを落としている。しかし昼間や休日には、きっと人の声と笑いで満ちるのだろうと想像できた。その理由はすぐに分かった。館内には大衆劇場がある。
かつて別の土地で一度観たことがあるが、あの空間には確かに人の歴史と文化が息づいている。いつかまた、ゆっくり腰を据えて観劇したい、そんな気持ちが芽生えた。

浴室へ。ロッカーは広く、無理がない。
洗体を済ませ、湯に身を沈めると、外の冷えと潮風でこわばっていた身体が、芯からほどけていく。

露天にあるのは、香川ならではの「釜揚げの湯」。
まるでおでんを湯がいたあとの白湯のように、文字通り白く濁った乳白色の湯。アルカリ性のやわらかな湯質は刺激が少なく、肌を静かに包み込み、しっとりと仕上げてくれる。温泉地でもそう多くは出会えない、不思議な優しさを持つ湯だった。

そしてサウナへ。
じりじりとした程よい熱。暗く、シックで、昔ながらの落ち着いた雰囲気。最近増えてきた明るく開放的なサウナとは対照的で、この静けさが心を深く沈めてくれる。清潔感も申し分なく、長く愛されてきた理由がよく分かる。

水風呂は、汗をかいた身体に素直に沁みる。
ととのいの場は三つ用意されていたのも印象的だ。

まずは、ととのいルーム。
強めに効いた空調と無機質な空間。快適ではあるが、正直なところ、心は落ち着かなかった。

次にマイナスイオンコーナー。
床の黒いタイルからイオンが発生しているとのこと。じんわりと静まってはいくが、劇的な変化は感じない。

そして最後に外気浴。
やはり、ここに戻ってくる。冷たい空気に身をさらし、体内の熱を手放す。寒さはあるが、それ以上に解放感が勝り、静かに、確かに昇天していった。

風呂を上がったあとは、上階の休憩スペースで漫画を読み、いつの間にか眠りにつく。
朝、目を覚まし、近くのうたづ臨海公園から瀬戸大橋を眺める。海と橋と空が重なり、四国にいることを実感する一瞬だった。

旅人を受け入れ、身体と時間を預けられる場所。
しおはまの湯 四国健康村は、ただの温浴施設ではなく、移動の途中に「一晩の居場所」を与えてくれる存在だった。

そして私は、湯の余韻を残したまま、次の目的地・愛媛へと向かった。


#サウナ

#休憩スペース

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