バームクーヘン

2026.06.30

5回目の訪問

「水平線の向こうへ」
第五章 航海者たち
希望を探していた
仕事は相変わらずだった
朝が来て
夜になる
だが男の中では変化が起きていた
以前は
「何が足りないんだろう」
だった
今は違う
「何を求めているんだろう」
になった
答えはまだない
だが方向は見えてきた
そんな頃だった
男はある人と再び話をする
北という男だった
大企業の社長でもない
政治家でもない
有名人でもない
だが不思議な魅力があった
人と人を繋ぐ
新しい挑戦を生み出す
誰かの人生が動く瞬間を支える
そんな仕事をしていた
男は思った
「面白そうだな」
いや
違う
羨ましかった
もっと正確に言えば
生きているように見えた
北は未来の話をした
可能性の話をした
出会いの話をした
移住者の話をした
男は夢中になって聞いた
給料の話ではなかった
出世の話でもなかった
なのにワクワクした
なぜだろう
答えは簡単だった
希望があったからだ
そしてもう一人
近藤という女性がいた
研究者だった
大企業を離れた
普通なら誰もが羨む道を降りた
男には理解できなかった
最初は
だが話を聞くうちに分かってきた
彼女もまた正解ではなく自分の人生を探していた
イベントを企画する
新しい人と会う
未来を考える
まだ独立していない
成功もしていない
それでも目が輝いていた
男は思う
「ああ、俺が好きなのはこういう人なんだ」
成功した人ではない
挑戦している人だ
完成した人ではない
航海している人だ
だから惹かれる
だから話していて楽しい
だから時間が足りなくなる
ある昼休み男はふと考えた
これまで尊敬してきた人たち
共通点がある
失敗しても進んでいる
迷っても進んでいる
答えがなくても進んでいる
それはまるで海の上の船だった
水平線の向こうを目指す船
目的地が見えなくても進む船
男は気付いた
自分も同じだった
いやずっとそうだった
車を買う前が好きだった
腕時計を選ぶ時間が好きだった
恋愛もそうだった
手に入れる瞬間ではない
未来を想像している時
希望が見えている時
その時が一番生きていた
その夜男は家へ帰る
玄関を開ける
リエちゃんがいる
いつもの日常
いつもの声
いつもの食卓
男はふと思った
船には港が必要だ
ずっと航海はできない
帰る場所があるからまた出航できる
安心できる場所があるから遠くへ行ける。
その時だった
男は長い間探していた答えの一つを見つける
俺は冒険だけが欲しいんじゃない
港も欲しいんだ
希望も欲しい
安心も欲しい
航海もしたい
帰る場所も欲しい
どちらかではない
両方だった
その夜眠る前にメモ帳を開く
そして一行だけ書く
「希望を感じられる生き方をしたい」
短い言葉だった
続く

バームクーヘンさんのHOSTELperch (パーチ)のサ活写真
0
20

このサ活が気に入ったらトントゥをおくってみよう

トントゥをおくる

トントゥとは?

ログインするといいねや
コメントすることができます

すでに会員の方はこちら

サウナグッズ

アプリでサウナ探しが
もっと便利に!

サウナマップ、営業中サウナの検索など、
アプリ限定の機能が盛りだくさん!