星野リゾート トマム 木林の湯
温浴施設 - 北海道 勇払郡占冠村
温浴施設 - 北海道 勇払郡占冠村
昨日より滞在しているトマムリゾナーレ。
十月の風が山を撫で、樹々の間を渡る音が耳にやさしい。
今日は、今年最後の泳ぎとしてミナミナビーチに身を運んだ。
澄みきった水面に身体を浮かべ、子どものように遊んだのち、
併設の木林の湯へと足を向ける。
湯処に入ると、まずはサウナ。
十二分の時を、静寂と熱に包まれて過ごした。
続いて身を沈めたのは二十一度の水風呂。
その肌ざわりは、都のそれとはまるで異なる。
ここは山の懐である。水は澄み、流れは柔らかい。
一息つくたび、心の塵が洗われていくようだった。
やがて露天の湯へ。
湯煙の向こうに、驚くべき光景があった。
鹿である。しかも一頭や二頭ではない。九頭。
人の手の届くほどの近さで、彼らはただ静かにこちらを見つめていた。
風に毛並みが揺れ、湯気と混じり合う。
その瞬間、ここが現の世なのか、あるいは天の境なのか、判然としなかった。
湯に浸かりながら、ただ息を呑む。
ああ、これこそが旅の醍醐味というものだろう。
人の営みを離れ、自然と心がひとつに溶けるひととき。
他のいかなる施設も、この体験には及ぶまい。
――まるで天国の片鱗を見たようであった。
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