まされん

2026.03.22

1回目の訪問

【ととのい値:92点】

マラソンのあと、身体はまだどこか遠くを走り続けている。脚は止まっているのに、心拍だけが少し遅れてゴールする、そんな午後二時だった。

僕は友人たちと一緒に、熊谷温泉 湯楽の里の暖簾をくぐった。

ここは地下深くから汲み上げた、やさしい単純温泉が特徴で、まるで「怒らない性格の人間」みたいな湯だ。刺激がなく、しかし確実に身体の芯に届く。そういう人、たまにいる。 

サウナ室は広い。これは重要なことだ。なぜなら、広いサウナは人生と同じで、多少の混雑も「まあいいか」と思わせてくれるからだ。温度は80〜90℃ほど、じっくりと汗を引き出してくるタイプ。派手さはないが、確実に仕事をする職人のような熱だ。 

ただ今回は時間がない。1セットのみ。
人生でいちばん贅沢なのは、時間があることだと誰かが言っていたが、その逆もまた真実だ。時間がないとき、人は妙に真剣になる。僕はその一回に、すべてを賭けた。

水風呂は18℃前後。走り終えた身体にとっては、ちょうどいい「現実への帰還装置」だ。 

そして露天風呂。
ここでようやく、世界が静かになる。岩風呂に身を沈めると、風が肌を撫でていく。熊谷の空は広く、少しだけ無口だ。湯はやわらかく、どこまでも続く午後の余韻をゆっくりとほどいていく。

人は多かった。でもそれは、この場所がちゃんと愛されている証拠だと思う。混雑というのは、人気の裏返しみたいなものだから。

気づけば僕は、もう走っていなかった。ただ、湯の中で浮かんでいた。まるで「走る」という行為そのものを、いったん預けてしまったみたいに。

サウナは一度だけだった。でも、それで十分だった。むしろ一度だからこそ、すべてが濃縮されていた気がする。人生にも、たぶんそういう瞬間がある。

木更津から少し離れたこの場所で、僕は確かに整っていた。

ありがとう、いい湯だった。

まされんさんの熊谷温泉 湯楽の里のサ活写真
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