白瀧 森のサウナ-白瀧大明神
その他 - 三重県 鳥羽市
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サウナ最高かよ 第51話「大自然の導き」
夜の帳が下りる頃、伊勢湾の潮風が鳥羽の山肌を静かに撫でていた。
私たちは、いつからこんなにも不器用な大人になってしまったのだろう。日々の喧騒から逃れるように、いや、自分自身から逃れるように、私は後輩を連れてこの場所へやってきた。
受付で手渡されたのは、一枚の布——ふんどしと、白い鉢巻だった。
更衣室の冷えた空気の中、私たちは無言で服を脱ぎ捨て、それを纏う。不思議と、そこには何の恥じらいもなかった。鏡に映る我が身は滑稽なほどに頼りなく、だからこそ、裸の自分と向き合う覚悟のようなものが、静かに胸の奥で灯っていた。
山道を踏みしめる足音が、やけに重く響く。
耳を澄ませば、ざわめく木々の隙間を縫うように、滝の音が一定のテンポで響いてくる。すべてがどこか遠くの出来事のように透き通っていて、私たちはただ、定められた運命に導かれるように歩を進めた。
目の前に現れた瀧は、冷厳なまでの気高さをたたえていた。
冷たい水流が頭上から容赦なく叩きつける。呼吸が止まり、思考が凍りつく。それは人工的なサウナの熱とは違う、もっと深い場所——自分自身の過去の過ちや、見て見ぬふりをしてきた心の澱(おり)を剥ぎ取るような、孤独な儀式のようだった。私たちはただ打たれ、そして繋がっていた。見えない何かに、あるいは、遠い昔に置き忘れてきた純粋な自分に。
やがてたどり着いたテントサウナ。
薪ストーブは狂おしいほどに熱を帯び、空間を満たしていた。ロウリュの柄杓から水が石に落ちた瞬間、言葉を失うほどの暴力的な熱波が降り注ぐ。熱い。だが、冷え切った体はその痛みを求めていた。
限界が訪れ、テントの外へ這い出る。
スタッフに導かれた先は、静まり返った滝壺だった。
水温は生温い。だが、それがどうしたというのだろう。自然が与えてくれたものならば、不純な文句など飲み込むしかない。私たちはそのぬるい水に身を委ねた。
外気浴の椅子に倒れ込む。
驚くべきことに、外気温が三十八度あるという現実が嘘のように、心地よい風が通り抜けていく。木漏れ日が疲れたまぶたを優しく包み込み、川のせせらぎが遠い記憶の底を揺さぶる。
私たちは三度、この極限のサイクルを繰り返した。
車に乗り込むとき、バックミラーに映る自分の顔を見た。
都会の澱は少しだけ洗い流されていたが、同時に、私たちは知ってしまったのだ。
目の前に広がる圧倒的な大自然の営みの前では、人間の悩みなんて、なんとちっぽけで、笑えるほど取るに足らないものなのだろうという、あまりにも当たり前の真実を。
車のエンジン音が、夜の闇に静かに吸い込まれていった。
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