MR.icefield

2025.08.11

1回目の訪問

お盆という名の小さな休戦が始まった月曜日。パートナーは故郷の実家へと旅立ち、僕はひとり、何でもない一日を過ごそうとしていた。けれど、止むことを知らない雨音がある午後、家の中にいることがなぜか息苦しく感じられた。
特に目的地があるわけでもないのに、気がつくと玄関で靴を履いている自分がいた。
そんな時の行き先は決まっている。身体を動かすこと、それしかない。ところが肝心のジムのキーカードを忘れてしまい、仕方なく地域のスポーツセンターへと足を向けた。汗を流した後、ふと頭に浮かんだのは常盤湯のことだった。
数年前まで、僕はこの銭湯のすぐ近くに住んでいた。当時も時折通ったものだが、あまりにも熱い湯船に辟易した記憶が鮮明に残っている。その後、リニューアルが行われたと聞いてはいたものの、なぜか足が向かなかった。思い出が上書きされてしまうような、そんな恐れがあったのかもしれない。
けれど今日は違った。雨に濡れた街を歩きながら、僕は常盤湯へと向かっていた。
到着すると、まず驚かされたのはそのオペレーションの洗練ぶりだった。夕方過ぎという時間帯もあってか、適切な密度を保つために一定の待ち時間が設けられている。まるで高級レストランのような配慮に、思わず感嘆の声が漏れた。
そして、中に足を踏み入れた瞬間、記憶の中の常盤湯は完全に書き換えられた。
その清潔感に圧倒される。露天エリアには往時の面影を残しつつも、サウナエリアは見事にモダンへと進化を遂げていた。まるで蛹から蝶へと変態を遂げたような、美しい変貌だった。
サウナ室は十人ほどが入れる絶妙なサイズ。そこに漂う湿度は、外の不快な湿気とは対照的に、身体が求める汗を引き出すために最適化されているようだった。体調を考慮して今日は限界まで熱風を浴びることは控えたが、水風呂との温度差が生み出す快感に、自然と「整い」の境地へと導かれていく。
最近はもっぱら辰巳湯派を公言していた僕だったが、今夜を境に政権交代が起こるかもしれない。思えば、この二つの銭湯という二大政党が身近にあることで、僕の心の自治は安定を保っているのだ。選択肢があるということの有り難さを、改めて実感した夜だった。
雨はまだ降り続いていたが、心は晴れやかだった。記憶が更新されることへの恐れは杞憂に終わり、むしろ新しい思い出が加わった喜びの方が大きかった。
拝。

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