押上温泉 大黒湯
銭湯 - 東京都 墨田区
銭湯 - 東京都 墨田区
ちっぽけな自分と下町サウナ
初 押上温泉 大黒湯
フリー 4セット ¥920 大露天側
人は追い込まれるとサウナに行けなくなる。けれど不思議なことに、サウナに行かないとさらに追い込まれる。わりと欠陥のあるシステムだ。
この数週間、僕の調いは、会社の給湯室で紙コップのコーンスープを飲みながら3分くらい遠くを見ることだった。もちろん調う訳がない。コーンスープはだいたい何も解決しない。せいぜい塩分を補給するくらいだ。
向かったのは押上の大黒湯。黄金湯の姉妹店らしい。姉妹店、姉妹都市、姉妹校。なぜ世の中の無機質なものは、だいたい女子として扱われるのだろう。考えてみたけれど、結論は出なかった。たぶん、そういうことを真剣に考える人間は、あまり出世しない。
大黒湯は火曜定休と聞いていた。しかし薬湯の予定表をよく見ると、隔週火曜は営業している。人生にはこういう“抜け道”が時々ある。そして今日は、奥さんが飲み会。つまり僕には、誰にも文句を言われない完璧なサウナチャンスが訪れていた。
18:30現着。
口コミにはPayPay可とあったが、現在は現金のみだった。ネットの情報というのは、元カノの「今でも友達だよ」くらい信用が難しい。
券売機で入浴料550円とサウナ370円を購入。受付に下駄箱札を渡すと、紙のリストバンドとロッカーキーをくれる。
脱衣所は昔ながらの銭湯そのものだった。男女吹き抜けで、中央には古い柱時計。時間だけが昭和から取り残されている。
僕のロッカー横では、江戸っ子ジジイ(敬愛)がマッサージチェアに寝そべり「あ゛ぁ〜」と声を漏らしていた。もちろん金は入れていないので、マッサージチェアは一切動いていない。ただ座っているだけで、なぜそこまで気持ちよさそうなのか。下町には時々、文明を超越した老人がいる。
サ室は90℃。1段。3面遠赤外線。
コンパクトなコの字型で、不思議と落ち着く。
水風呂は内湯と露天に2つ。どちらも22℃くらいなのに、内湯の方が冷たく感じる。露天側は地下水なのか、水がやけに柔らかかった。人間関係もこれくらい柔らかければいいのにと思う。
2階の外気浴スペースには、ベッドチェア、ハンモック、白イスが雑多に並んでいる。寝転ぶと真正面にスカイツリーが見えた。
僕はどちらかと言えば東京タワー派だ。でも目の前で見るスカイツリーは、もはや建築物というより圧力だった。巨大すぎて、自分の悩みも中年太りも、全部どうでもよくなる。しかも隣ではお相撲さんがベッドチェアで休憩していた。僕の中年太りとはそもそも土俵が違う。人間にはサイズという概念があるのだと、静かに思い知らされる。なんだか、自分が少しだけちっぽけに思えるサウナだった。
男
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