楽だの湯 稲沢店
温浴施設 - 愛知県 稲沢市
温浴施設 - 愛知県 稲沢市
『水曜日、22時のラクダと岐阜タンメン』
のれんをくぐった。紺地に「男」の文字が、でかい。
22時。思ったより人がいる。学生くらいの若い連中が、廊下でわいわいやってる。友達同士の、あの空気。——俺にも、あんな時代があったはずだ。たぶん。
サウナ室に逃げ込む。
じり、じり。熱が背中から這い上がる。テレビでは遺産相続のドラマが流れてる。誰かが誰かを訴えて、誰かが泣いてる。現実でも、みんな揉めてるんだろうな。金のことで、仕事のことで、家族のことで。
でもここでは、誰も揉めていない。
汗が、ぽたり。またぽたり。どうでもよくなってくる。不思議なもんだ。
水風呂へ。
どぼん。——ぷはっ。冷たい。ちゃんと冷たい。遺産も、相続も、全部あの熱の中に置いてきた。
外気浴。
椅子に深く座って、天井を見る。人間、揉めたくて揉めてるわけじゃない。ただ、熱を冷ます場所がなかっただけなのかもしれない。サウナがあれば、みんなもう少し穏やかになれるんじゃないか。——知らんけど。
飯は岐阜タンメンにした。
キャベツがほろほろ、豚肉がごろごろ。スープをひと口。あ、うまい。細麺をずず、とすする。世界中の揉め事を、このスープで煮込んでしまえばいいのに。
また来る。それだけは、確かだった。
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