田中 尚子

都心からそれほど遠くないのに、車を降りた瞬間に空気がひんやりと澄んでいて、それだけで来てよかったと思える場所でした。自然の音が絶えず聞こえて、背中の緊張が少しずつほどけていくようでした。

チェックイン後、まずは宿泊前に送られてきたWEB版ハウスマニュアルを読み返しながら、人生初の薪サウナに挑戦。初めての火起こしは不安もありましたが、説明が本当に丁寧で、ひとつひとつの手順を確認しながら進めていくと、ちゃんと火が育っていき、炎が大きくなるにつれて気持ちまで温まっていくようでした。サ室の窓から見える奥多摩の景色が静かで美しく、ロウリュの蒸気と外の緑が自然に混ざり合う様子は、写真では伝わらない心地よさがありました。

水風呂は思っていたよりも柔らかな冷たさで、そっと浸かると体の余分な熱がゆっくり落ち着いていく感覚。そこから外に出て、川の音を聞きながらインフィニティチェアに身を預けていると、深呼吸が自然と何度も繰り返され、気づけばすっかり心が軽くなっていました。サウナ→水風呂→外気浴の流れがこんなに心地よいものなのかと、初心者ながらちょっと感動してしまいました。

宿泊棟は古民家をリノベーションした建物で、新品のホテルとはまた違う、落ち着いた「余白」のある空間。少し古さの残る部分もありましたが、それがむしろ自然の中の滞在にはよく馴染んでいて、肩の力が抜けるような雰囲気でした。

セルフで行う作業は多めですが、そのぶん自分のペースで過ごせて、「やらされている」感じがないのが心地よかったです。サウナに関しても、丁寧なマニュアルのおかげで初心者の私でも安心して取り組むことができ、自分の手を少し動かすことで、サウナとの距離がぐっと近づいたように思います。

全体を通して、無理せず自然体で過ごせる場所でした。サウナが得意ではない方や、初心者でも安心して楽しめると思います。静かで、優しくて、自分を労われる時間。季節を変えてまた訪れてみたい、そんな場所でした。