「サラダバーをくれ!」

私は、自他ともに認める「ウェルビー福岡」の常連である。
福岡出張でホテルなんて泊まろうと思ったことすらない。

街をササッとすり抜けて階段を登りあの空間に滑り込む瞬間は、私にとって人生の調律のようなものだ。

館内での私の動きに、1ミリの無駄もない。
フロントでのやり取りから脱衣、洗い場への足取りにいたるまで、すべてが我が家のリビングのごときスムーズさ。

お気に入りの「からふろ」のドアを開け、暗闇の畳に腰を下ろす。
セルフロウリュのパチパチという音だけが響く静寂の中で、「あぁ、これこれ」と心の中で小さく頷く。極寒のアイスサウナから強冷水への黄金リレー、そして完璧なととのいへ。

周囲のサウナーたちからも「あいつ、できる」と思われているに違いない、完璧な常連のたたずまいである。

心も体もフニャフニャに解きほぐされ、完全なる多幸感に包まれた私は、これまた流れるような足取りでレストランへ向かう。
メニューなんて見ない。席につくなり「いつもの」と言わんばかりの慣れた手つきで、サ飯を注文する。運ばれてきた脂質と塩分の塊を前に、私はどこまでもクールに、ベテランの余裕を崩さずに箸を動かしていた。

そう、私の「表面」は、完璧なる常連のそれだった。
……だけどね。極限までデトックスされ、ピュアな野生を取り戻した私の身体の奥底では、ただ住まいとは真逆の、ドロドロとした大暴動が起きていたのよ。

ガツンとくる旨味が喉を通り過ぎた瞬間、私の細胞たちが、常連のプライドなんてお構いなしに、一斉に拡声器を持って叫び始めた。
「おい!!! 常連ぶってんじゃねえよ!!! そんなことより生野菜はどこだ!!!」
メニューを見渡せば、そこは茶色い旨味のパラダイス。だけど、今の私が必死で隠しているこの渇望、わかる!? 欲しいのは、手の込んだ味付けじゃない。トングでワサッと皿に盛られた、あの「ただの生レタス」や「雑に切られたキュウリ」を、パリポリと音を立てて貪り食いたいのだ。細胞が求めているのは、圧倒的な「生の水分と酵素」なのである。
だけど、私は常連。ここで「あの……生野菜、ないですか?」なんてオロオロと店員さんに聞くわけにはいかない。そんなことをしたら、これまでの完璧な佇まいが水の泡だ。
私は、湧き上がる飢餓感を必死でゴクリと飲み込み、まるですべてに大満足しているかのようなディープな微笑みを浮かべながら、激ウマの唐揚げを噛み締めていた。
ウェルビー福岡さん、あなたのサウナは120点満点、ホスピタリティも完璧。だけど、あのクールな顔の裏で、常連たちがどれほど「生のビタミン」を欲して悶絶しているか、あなたには見えているか?

ペンネーム:湯気文吾(宮崎直哉)さんのウェルビー福岡のサ活写真
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