台風が来ると聞くと、私は避難所ではなく、24時間営業のサウナを探し始める。

「次はどこに籠城しようか」

十年ほど前に気づいた。どうせ外へ出られないなら、広くて、温かくて、人に急かされない場所に閉じ込められるほうがいい。私にとって台風は災害であると同時に、最高のサウナ日和でもある。

しかも台風の日は、どんな人気施設も不思議なくらい空いている。

誰も来ないテーマパークに迷い込んだような贅沢が味わえる。

今日の避難先はRAKU SPA BAY横浜。

18時にチェックインし、まずは浴場へ向かう。

ここは照明が明るすぎない。浴場全体が少しだけ陰を抱えていて、湯気が輪郭を曖昧にする。その景色は、谷崎潤一郎が風呂好きだったら『陰翳礼讃』の続編を書いていたかもしれないと思わせる。

そして私が何より好きなのが露天の海水風呂だ。

身体を海で包み、そのままサウナへ入る。

汗なのか海なのか、自分でも判別がつかない。

しかも今日はアウフグースの日だった。

熱風は「頑張れ」とは言わない。ただ黙って、余計な考えだけを飛ばしていく。

人間、背中から風をもらうだけで、少しだけ生き直せるらしい。

十分すぎるほど、ととのったあと、上階の休憩スペースへ。

呪術廻戦を開き、世界観をもう一度なぞる。

設定とは、物語のためにあるのではない。作者が自由になるためにあるのだと改めて思う。その勢いのまま一本エッセイを書く。

しかし今日は、そこからが長かった。

執筆中の小説を書いては館内を歩き、歩いては漫画を読み、飽きたらネットを眺め、また小説へ戻る。気づけばワールドカップまで始まっていた。

締切というものは家にいると敵だが、サウナでは同居人になる。

不思議なことに、アイデアは机の前ではなく、浴場と休憩室を往復する途中に落ちている。

だから私は、台風が近づくたびに天気予報を見る。

雨雲の位置ではない。

次は、どこのサウナに閉じ込められようか、と。

ペンネーム:湯気文吾(宮崎直哉)さんのRAKU SPA BAY 横浜(旧INSPA横浜) ラクスパベイ横浜のサ活写真
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