宮崎直哉

2025.07.16

1回目の訪問

温度の正義、というのが、さやの湯処にはある。

酸冷交代浴――なんだか化学の授業の小テストに出てきそうな言葉だが、実際にはもっと感覚的なものである。
炭酸泉で皮膚の下を血流が駆け巡るように感じるあの一瞬、そしてそのあとに入る水風呂で「はぁ〜〜……」と漏れる、冷たさというより「沁みる」感覚。それを繰り返す。人によっては人生もそうやって繰り返してるのかもしれないが、こっちはもっと肌感覚に素直である。

サウナ→炭酸→水風呂→炭酸→水風呂。
整い椅子に腰掛けると、風が過ぎる。
目の前にあるのは、落ち着きすぎた日本庭園と、なんだか主張の強い五右衛門風呂。その丸い縁に沿ってお湯がちょろちょろとこぼれていくのを見て、「ああ、無駄とは贅沢なのだな」と思う。

シェイプアップバスでは、空気圧という名前の圧力社会に揉まれる。シュウウウッと身体が押され、揉まれ、疲労なのか快楽なのかわからないまま、出た頃にはふくらはぎが「ありがとう」と言っていた(ような気がした)。自分の身体のパーツと会話するのも悪くない。

サ飯の十割蕎麦は、豪華というより誠実だ。十割という言葉の潔さ、風味のぶれなさ、そして何より風呂上がりの身体に沁みていくあの優しさ。だれが言ったか「汁は飲むな」と言うが、あれは蕎麦湯の文化を知らぬ者の戯れ言だと思いたい。

人の感想はあてにならないが、自分の身体が語る声には耳を傾ける価値がある。そういう意味で、さやの湯処は語りかけてくる。「疲れ、持ってるでしょ?」って。

でも、だから何なんだ。明日もまた肩に力が入るプロジェクトがやってくるのだ。とはいえ、今日くらいは脱力の勝ち。
酸冷交代浴、これぞ大人のための抜け道である。

宮崎直哉さんの前野原温泉 さやの湯処のサ活写真
宮崎直哉さんの前野原温泉 さやの湯処のサ活写真
宮崎直哉さんの前野原温泉 さやの湯処のサ活写真
宮崎直哉さんの前野原温泉 さやの湯処のサ活写真
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