土岐 よりみち温泉
温浴施設 - 岐阜県 土岐市
温浴施設 - 岐阜県 土岐市
連休二日目。朝の高速を西へと走る。
車窓には所々色づき始めた山々。目的地は岐阜県土岐市。
美濃焼で知られるこの町に立つ「土岐よりみち温泉」へ。名前の通り、旅の途中でふらりと寄るのにぴったりな響きだ。インターを降りてすぐ、丘の上に佇む建物が見えてくる。どこか温かみのある佇まい。9時の開店に合わせて入館すると、まだ人も少なく、館内は落ち着いた空気に包まれていた。清潔感あふれる館内の雰囲気が心地よい。
浴室は2階。男湯は「森の湯」
名の通り、木の温もりと緑の気配を感じる空間だ。香りのよい石鹸で身を清め、まずは内湯の炭酸泉へ。薬草が入っているのか、湯はほんのりと緑がかっている。無数の泡が肌を包み、じんわりと体の芯まで温まる。朝の冷えを忘れる程に、心までほぐれていく。露天の温泉は無色透明。美肌の湯と呼ばれるその泉質は、美容液のようなとろみを帯び、指先が湯をすくう度にその柔らかさに驚かされる。まるで湯そのものが肌をいたわってくれているかのようだった。
そして、サウナ室へ。照明を抑えた薄暗い空間。5段のベンチが広がり、奥に鎮座するストーブが静かに熱を放つ。テレビではちょうど駅伝が中継されており、選手たちの息づかいが熱の中に紛れて流れていく。室温は96℃。入った瞬間から熱が肌に刺さる。30分おきのオートロウリュが始まると、サウナストーンにミスト状の水が三度噴射される。その度に立ち上る蒸気が室内を包み、体感温度は一気に上昇。じっとしていても汗が滝のように流れ落ちる。耳をすませば、汗が床に落ちる音さえ聞こえるようだ。限界の一歩手前、しかしそこに訪れる快楽の静寂。ああ、これだ、と心の奥で呟く。
やがて水風呂へ。12℃。氷のような冷たさが一気に肌を刺す。全身がきゅっと引き締まり、頭の中が一瞬で真っ白になる。けれど、冷たさの奥にあるのは痛みではなく、むしろ恍惚。生きていることを全身で感じる瞬間だ。
露天に出ると、丘の上から見渡す景色が広がっていた。視線の先には住宅街、そしてその向こうに遠く連なる山々。気温は15℃。少し肌寒いくらいが、いまはちょうどいい。風が頬を撫で、体の中に残った熱を優しく攫っていく。椅子に腰を下ろし、深呼吸。空の青さが目に沁みる。静かな時間。何も考えず、ただ風と光に身を任せる。熱と冷、動と静。その行き来のなかで、心までもがゆっくりと整っていくのを感じた。
湯上がりの館内は、まだ午前の光に満ちている。
思えば、温泉とは「よりみち」にこそ似合う場所なのかもしれない。目的地ではなく、日常と非日常の間で、ふと立ち止まる時間。湯に包まれ、風に触れ、再び自分の輪郭を取り戻す。そんな穏やかな感覚が、この土岐の丘の上で静かに息づいていた。
以上
男
さすがです♪引き込まれました☺️
トントゥ、コメントありがとうございます。
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