GREENITY IWATA
ホテル・旅館 - 静岡県 磐田市
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土曜日の昼前、家でおとなしく昼ごはんを食べるという選択肢を華麗にスルーして、私はグリニティイワタへ向かった。
本日の男湯はDaichi。入口をくぐった瞬間から、すでに現実世界の労働ポイントではなく「ととのいポイント」を貯め始めている自分がいる。
体をざっと清め、さっそく真っ黒なモール温泉へ。
湯船の中が本当に黒いので、自分の腹回りが見えない。これはきっと神様がくれた一時的なフォトショップ機能だ。
とろりとしたお湯に肩まで浸かると、大地にそっと抱きしめられているような安心感に包まれ、「このまま溶けて土に還るのも悪くないかも」と、少しだけ危ない方向に前向きな気持ちになる。
十分に温まったところで、無音のサウナ室へ。
扉を開けると、テレビもBGMも何もない。聞こえるのは自分の息と、遠くの誰かのタオルがふわっと動く音だけ。3段ベンチの最上段に陣取れば、上に行けば行くほど熱くなるという当たり前の理屈を、全身でド直球に叩き込まれる。ここはもはや王様席ではなく、ゆで卵になる覚悟を決めた者だけが座れる場所だ。
じっと耐えていると、毛穴という毛穴が「すみませんでした」と謝罪会見を開くみたいに汗を噴き出してくる。
限界を感じたところで水風呂へ。
足を入れた瞬間のひやりとした驚きのあと、すぐに水のやわらかさに気付く。角が取れた肌触りの良い水で、全身を包み込んでくれる感覚がなんとも心地よい。
「このまま沈んでいいよ」とささやかれている気がして、思わず底まで沈みたくなるが、ニュースになりたくはないので理性で踏みとどまる。
そして仕上げは外気浴。
今日は冬にしては温かくて、露天に出た瞬間、ふわっと優しい空気が体をなでていく。
椅子に体を預けて、空を見上げながらぼんやりしていると、「そういえば今日、何も生産的なことをしていないな」と一瞬だけ頭をよぎる。
だが次の瞬間には、「いや、心のメンテナンスはだいぶ生産的だろう」と、自分に都合よく再評価する。
熱いサウナ、やわらかい水風呂、のんびりした青空。
その三点セットに挟まれているうちに、頭の中のToDoリストはどこか遠くへ飛んでいった。
時計を見ると、まだ昼前。世間的には「これからスタート」の時間帯に、私は一人勝手にエンディングロールを迎えている。それでも帰り道の車内で「お昼は何を食べよう」と考えているあたり、人は結局、どれだけととのっても腹は減るようにできているらしい。
多分今度の週末も同じ時間にグリニティイワタで沈みかけている自分を想像しながら、そっとハンドルを握る。
目的地はいつもの家なのに、心だけはモール温泉の中でふわふわと漂っている。
それでもお腹はしっかり空いていて、人間は単純で面白い。
以上
男
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