初音湯
銭湯 - 東京都 板橋区
銭湯 - 東京都 板橋区
サウ後日記⑥
曇天
九月一三日
東京は板橋区にある、初音湯
秋雨は未だ落ちず、されど湿気は街路の空気を重たくしていた。成増の通りを抜けるうち、街灯の下に古めかしい銭湯には階段に続く入り口にはステンドグラスに飾られており、階段を登ると
墨染の布と赤褐色のレンガ調の壁に
不意に異様な装飾が現れる。天女の彫刻である。
柔らかな衣を翻し、細き腕を天へ差し伸べるその姿は、都会の銭湯にはあまりに不似合いであった。
不似合いであるがゆえに、異様な美を放っていた。
その姿は、いかにも昭和の残照を宿し、時代に抗うかの如く堂々としていた。
聖域に足を踏み入れるための通過儀礼を軽く終えて、
いざ、支度場に入る。
衣服を脱ぎ、裸の身体を晒す儀式。諸兄、
「白濁パラッソス殿」の肉体と並ぶ。
道中、私を促し、諸兄は勝手に銭湯ハシゴの行程を決めた。
意志は強く、無言の支配力を帯びている。
無理やり銭湯ハシゴを続ける身の上に、羞恥や焦燥と混じった嫌な感覚が絡みつく。
小生の心は、微かに揺れるが、どの方向にも傾かぬまま、ただ事物の影を受け止めながら、
洗い場の扉を開く腕は重く感じた。
洗い場で體を清めた後に
熱の庵に入る為の白いプラスチックで作られたサウナキーで木製の扉を引き開ける。
狭き熱の庵は木の壁板が年月を帯びた艶を放ち、87度ほどの熱気が肌を優しく包む。遠赤外線ヒーターの熱気と微かに流れるフィーリング音楽が室内を満たす。その旋律は決して騒がしくはなく、むしろ静かなる熱さに寄り添い、心の奥底に微かな共鳴を生む。
遠赤外線ヒーターが置いてあろう所には
壁で仕切られており、肌の突き刺さす触接的な熱気ではなく。
優しく體の全部を包み込む様な熱気である。
五分程の砂時計を二回返す所で體に纏わりつく汗を滴らせながら熱の庵を後にする。
體を再び清め、水風呂に身を預ける。
水温は20℃程で優しい地下水、體を柔な衣が優しく包み込む、まるで入り口でみた天女になろうとする微かな衝動を覚えるのであった。
言わずもがな好みである。
そうして、次の湯屋に足取りを進めるのである。
今回の投稿も秀逸です⭕️ 愚弟に在るまじき投稿を今後も期待せずにはいられない
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