君津の湯
温浴施設 - 千葉県 君津市
温浴施設 - 千葉県 君津市
【ととのい値:88】
夕方の君津の湯に入ると、そこにはいつも通りの、しかし少しだけ現実からズレた時間が流れていた。
平日の火曜日。特別な日ではないはずなのに、人はそこそこいる。まるで皆が同じ夢を共有しているみたいに、静かに湯気の中へ溶けていく。
ここは13種類もの風呂を持つ、ちょっとした温浴の迷宮だ。 
ジェットバスは種類が多く、それぞれが別々の人格を持っている。肩を叩く者、腰を押す者、何も言わずにただ水流で語る者。僕はそのどれとも、深い会話を交わした気がする。
サウナは二つ。
一つはイベントで115℃まで上がったドライサウナ。熱は言葉を持たないが、確かに「ここにいろ」と命じてくる。抗う理由はない。
もう一つのフィンランドサウナは、30分ごとに訪れるオートロウリュと熱波。湿度が静かに身体へ入り込み、思考の輪郭を曖昧にしていく。表示温度以上に体感が熱いのは、きっと水蒸気のせいだろう。 
水風呂は地下から汲み上げられた冷水で、深さがある。沈むたびに、自分が少しだけ軽くなる。どこか遠くの記憶が剥がれ落ちるような感覚。
外気浴に出ると、空を横切る飛行機が何度も現れる。
あれはどこへ向かうのだろう。考えかけて、やめる。今ここにいる自分には関係のないことだから。
露天の高濃度炭酸泉は、ぬるめの温度で時間の感覚を曖昧にする。細かな泡が肌にまとわりつき、まるで「急がなくていい」と囁いているようだった。
3セット終えた頃、世界はほんの少しだけ優しくなっていた。あるいは、自分の方が変わったのかもしれない。
君津の夜に、静かな余白を与えてくれる場所。
今日もきちんと、ととのわせてもらった。
ありがとう。
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