PARADISE 大手町
温浴施設 - 東京都 千代田区
温浴施設 - 東京都 千代田区
オジサンたちの浮遊する朝
初 PARADISE 大手町
3時間 6セット ¥3278
夜勤明けだった。
夜勤明けというのは少し不思議だ。最初はただ眠いだけなのに、そのうち眠気と覚醒のあいだの曖昧な場所に長く滞在できるようになる。酔っているわけでもなく、元気なわけでもない。その中途半端さが妙に心地よい。身体に良いとは思えないけれど、世の中には身体に良くないのに愛されているものがたくさんある。締切とか、恋愛とか。
向かったのは大手町にできたPARADISEの2号店。
休日の大手町は静かだった。平日ならスーツ姿の人々が川の流れのように行き交うのに、今日はビル風だけが律儀に出勤している。時折スーツケースを引いた旅行客が現れ、そのたびに「ここはどこなんだろう」という顔をしていた。たぶん僕も同じ顔だった。
9時30分到着。
25階でQRコードを読み込み、顔認証を済ませる。回転ゲートを抜けると利用時間の計測が始まる。
サウナに来たはずなのに、なぜか近未来の収容施設へ入所する気分になった。
料金は1時間2178円。
高い。
しかし3時間3278円と書かれると急に安く見える。人類は昔から数字に騙され続けている。たぶんこれからも。
浴室は期待以上だった。
110℃のドライサウナ。100℃のセルフロウリュサウナ。11℃と14℃の水風呂。
数字だけ見ると攻撃的だが、実際はよく整えられている。高級ホテルの執事みたいな熱さだった。
そして26階へ。
そこには大きなプールがあった。
観葉植物。ベッドチェア。水面に揺れる光。
大手町のオフィスビルというより、誰かが東南アジアのリゾートホテルを間違えて屋上に積み上げてしまったような空間だ。
フロートベッドに身体を預け、天井を見上げる。
何も考えない。
正確には考えているのだろうけれど、その考えは言葉になる前に溶けていく。良いサウナのあとには、そういう時間がある。
ただ一つ気になったことがあった。
プールに浮かぶ人々の大半がオジサンだった。
もちろん僕も含まれる。
広いプールに無数のオジサンが静かに浮かぶ光景はなかなか壮観だ。アザラシでもラッコでもない。もっと都会的で、もっと疲れている。
口コミは賛否あるらしい。でも僕は嫌いじゃなかった。
3つのサウナはどれも素晴らしく、水風呂は鋭く冷たい。そしてプールでの浮遊感は少し危険なくらい気持ち良い。
帰る頃には夜勤明けの眠気は消えていた。
あるいは眠気のほうが僕を置いて先に帰ったのかもしれない。そういうことも、ときどきある。
男
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