2021.06.15 登録
[ 東京都 ]
慣れ親しんだ銭湯に入ると、時間の流れがほんの少しだけ緩やかになる気がする。理由はうまく説明できないけれど、たぶんそれでいいのだと思う。
友人と二人、並んで座り、黙ったまま蒸気の中にいる。特に話すことはない。でも不思議と、何かは確かに行き来している。言葉にしないまま成立する会話というのは、たぶん存在する。少なくともそのときの僕らには、そう感じられた。
水風呂はちょうどいい温度だった。身体をゆっくりと沈めていくと、さっきまでまとわりついていた熱や思考が、静かに離れていく。水面はわずかに揺れて、それもすぐに元に戻る。
外に出て、しばらく何もせずに休む。ただ座っているだけなのに、それで十分な気がしてくる。何かを足す必要も、どこかへ向かう必要もない。
たぶん、こういうのでいいのだと思う。理由はやっぱり、うまく説明できないけれど。
[ 埼玉県 ]
24時を少し回った頃、僕はいつものようにサウナの扉を押した。そこには「会話厳禁」と書かれた小さな掲示があった。簡潔で、曖昧さのない言葉だ。でもその夜、その言葉はまるで別の言語で書かれているみたいに、そこにいた“サルたち”には届いていなかった。
サルたちは静かにできなかった。いや、できないというより、する気がないように見えた。ときどき、なぜサルたちは簡単なルールを守れないのだろうと考えることがある。理由はたいてい複雑そうに見えて、実際は驚くほど単純だ。たぶん、そのどちらでもないのかもしれない。
テレビの前で一匹のサルが笑った。その笑いは湿度の高い空間に広がり、すぐに溶けていった。少なくとも彼らには、映像を理解するだけの力はあるらしい。それがわかっただけでも、小さな発見だった。
僕は少しだけ疲れていた。理由はうまく説明できない。ただ、このサルたちのいる場所に長くいるべきではないと感じた。だから立ち上がり、水風呂へ向かうことにした。
そのとき、一匹のサルがほとんどためらいもなく水の中へ飛び込んだ。音がして、水面が揺れた。その瞬間、時間がほんの少しだけ歪んだ気がした。子供ですらしないことを、サルは平然とやってのける。世界はときどき、そういうふうにして僕の理解を軽く追い越していく。
僕は何も言わずにその場を後にした。夜の空気は思ったより冷たく、少しだけ現実的だった
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