2022.06.25 登録
[ 鹿児島県 ]
鹿児島遠征の最終日。
空港へ向かう前、立ち寄ったのが日当山温泉 花の湯だった。空港近くという立地もあり、旅の締めにちょうどいい。
イキタイ数も程よく、自然と期待が高まる。
入館してまず驚くのは、520円という価格だ。この内容でこの料金は、正直、信じがたい。
サウナはボイラー式。室温は90度近く、日が暮れる前の時間帯にもかかわらず、サ室はほぼ満席だった。地元に根付いた施設であることが、自然と伝わってくる。
水風呂は体感20度前後。数字だけ見れば控えめだが、この水がとにかく気持ちいい。無理のない冷たさで、何度でも入りたくなる。
外には十分すぎるほどのととのいチェアが並び、休憩には困らない。環境が整っているというのは、こういうことだと思わされる。
地元の猛者たちに混じり、3セット。
淡々と、しかし確かに深く整った。
鹿児島は、本当に素晴らしい土地だった。
また必ず、サウナを決めに戻ってきたい。
[ 鹿児島県 ]
昨夜は、しっかりと眠れた。
目の前にある岩場から、硫黄のガスが抜け続ける音が一晩中響いていて、その「ゴー」という一定の音が、いつの間にか子守歌のようになっていた。
朝、霧島の澄んだ空気の中で目を覚まし、浴場へ向かう。
霧島国際ホテルは男女入れ替え制で、今朝は昨夜とは違う浴場が男性側になっていた。昨日は女性風呂だった場所を、今日は男性として味わえる。宿泊者だけが得られる、ささやかな特権だ。
こちらの浴場には、いわゆるドライサウナはない。
その代わり岩盤浴が設けられているが、今回は利用できず。それでも、不思議と物足りなさは感じなかった。湯に身を沈め、蒸し風呂で自然と身体は整いの方向へ向かっていく。
朝から2セット。
無理のないペースで、静かに汗をかく。窓越しに差し込む朝の光と、山の気配が、呼吸を深くしてくれる。派手な設備がなくても、整う条件は十分だった。
とても気持ちのいい朝の始まりだった。
こうして迎えた朝だけでも、この宿に泊まった価値はあったと思える。
[ 鹿児島県 ]
夕食をしっかりと楽しんだあと、再び浴場へ向かった。
満腹感と満足感を抱えたままのサウナは、正直なところ少しだけ不安もあったが、時間帯が良かった。
終了間際の浴場は人も少なく、夕方とはまるで別の場所のように静まり返っていた。
選んだのは蒸し風呂。
下から立ち上る温泉の蒸気が容赦なく身体を包み込み、10分もいれば自然と汗が噴き出してくる。
これを2セット。一日に二度、同じ蒸し風呂を決めてしまうとは思っていなかったが、それだけこの蒸しの質が良かったということだろう。
外気浴やととのいチェアはない。
だが、浴室内には大きなベンチがある。
決して行儀がいいとは言えないが、この時間、周囲には誰もいない。身体をしっかり拭き、静かに横になった。
天井を眺めながら、深く息を吐く。十分すぎるほど整っていた。
明日の朝も、5時からこの湯に入れる。
そう思うと、不思議と心が軽くなる。
鹿児島の旅は、まだ終わらない。
[ 鹿児島県 ]
鹿児島の旅の最終宿として選んだのは、霧島国際ホテル。
遠くに感じたその場所も、意外とアクセスは容易で、到着後はまるでオールインクルーシブのように、チェックイン後すぐに焼酎を楽しめるのが嬉しい。
前回の反省を生かし、お酒はほどほどに控え、サウナをしっかり堪能することを心がけた。
食事前に、まずはドライサウナへ。
温度はそれほど高くなく、20分ほどいても心拍数はあまり上がらない。水風呂はおそらく約20度ほどで、とても柔らかい冷たさが心地よい。
しかし、特筆すべきは、男湯の屋上にある蒸し風呂だ。
下から立ち上る温泉の蒸気が、まるで昔の湯快地を思わせるほどの蒸し暑さを演出し、ここでしっかり整うことができた。
温泉の質も抜群で、湯の花が浮かび、その風情を楽しむことができる。
さらに、アイスのサービスもあり、白熊アイスが食べられるという嬉しいサプライズも。
まだまだ鹿児島サウナ旅は終わらない。
[ 鹿児島県 ]
桜島を正面に望む夜、国民宿舎 桜島レインボー温泉に宿泊した。
事前にサウナの有無はきちんと確認していた。
日帰り入浴もできる施設だが、今回は宿泊。時間に追われることなく、たっぷりと向き合えるのが何よりありがたい。
温泉は錆のような鉄の香りがはっきりと分かる強めの泉質。身体にまとわりつくような湯で、いかにも火山の島らしい。
ただ、この日はボイラーの調子なのか、少しぬるめに感じた。
肝心のサウナは、8人以上が入れる広さ。
だが正直、熱さは控えめだった。温度計は80℃前後を指しているものの、体感はそこまで上がらない。
珍しいことに、ストーブは廃油ストーブのような造りで、窓越しに火柱が常に揺れている。
その光景は面白いが、もう一段、熱が欲しかったのが本音だ。
夕食前にまず2セット。
食事はどれも美味しく、酒も進む。旅先の夜らしい、緩んだ時間を過ごしたあと、再びサウナへ向かう。
21時を過ぎると一般客はおらず、浴室は静まり返る。
サウナは事実上の貸切だった。
ここで一つ、コツを掴む。顔にタオルを巻き、顔面を守ったまま、できるだけストーブの近くに立つ。遠赤外線を身体の芯で受け止めるようにすると、ようやく内側から温まってくるのが分かった。
水風呂はチラーなしと思われるが、十分に冷たい。体感は16〜17℃ほど。派手さはないが、しっかり締まる。外気浴はできないものの、室内に椅子が3脚あり、そこで十分に整うことができた。
夜の部はしっかり3セット。
朝風呂ではサウナが使えないのは残念だったが、夜に4セット決め切ったことで、今回の鹿児島サウナは納得の締めとなった。
桜島の麓で過ごす、静かな夜のサウナ。
癖はあるが、記憶には強く残る一湯だった。
[ 鹿児島県 ]
仕事に一区切りをつけたあとだった。
この一年、振り返ればかなり真面目に走り続けてきた。
だから今回は、自分と妻へのささやかなご褒美として、目的を決めすぎない旅に出ることにした。温泉目当てというわけでもなく、ただ鹿児島という土地の空気に触れてみたかった。
鹿児島遠征の初日、鹿児島市の沿線にある霧島温泉へ足を向ける。
観光地の顔ではなく、生活の延長線上にある銭湯だ。460円という銭湯価格で、天然温泉かけ流しの湯に身を沈めることができる。
湯はとろりと柔らかく、肌に吸いつくようだった。派手さはないが、芯から温まり、身体がゆっくりほどけていく。ここでは温泉こそが主役なのだと、すぐに分かる。
サウナは4人ほどでいっぱいになる小さな空間。
別料金が当たり前の銭湯サウナとは違い、この価格に含まれているのがありがたい。
地元の高校生らしき若者や、背中に長い時間を刻んだ男もいたが、誰も多くを語らない。ただ同じ熱を、静かに共有する。
水風呂は水道水が注がれ続け、体感は18度前後。派手さはないが、しっかりと身体を冷やしてくれる。
整いの場所は浴室の外、脱衣所に置かれたベンチ。身体をきちんと拭き、サウナマットを敷けば、ここで十分に整うことができる。特別な椅子がなくても、必要なものはすべて揃っていた。
鹿児島遠征の初日。
とても良いサウナに出会えた。
この旅は、きっといいものになる。
[ 三重県 ]
半月ぶりのサウナだった。
かつては三日に一度、呼吸をするように通っていた熱と水の世界から、しばし距離を置いていた。
海外遠征に2週間ほど出ており、その間、身体は確かに動いていたが、どこか芯が空白のままだった。
はなしょうぶを訪れるのは、正月以来になる。
大寒波の只中。空からは雪が舞い落ち、地上の冷気は容赦なく身体を包む。そんな日にこそ、サウナは真価を発揮する。
割引セールに背中を押され、百回分の回数券を手にした。
これでまた、日常の軌道に戻れる。そう思えた。
22時のアロマタイム。ローズマリーの香りが静かに広がる。
外の寒さが厳しかった分、熱はやさしく、深く、身体の奥まで届いた。十分以上座っていても苦しさはなく、ただ汗とともに時間が溶けていく。
水をくぐり、外へ出る。
雪の降る露天は、音が消えた世界だった。白く曇る吐息、遠くの静寂。
だが、時折吹く風が、木々に溜まった雫を落とす。
その一滴が氷のように冷たく、肌を打つ。
思わず身をすくめながらも、その刺激が確かに「今」を刻んでいた。
外気温は一度前後だっただろう。
寒さは痛みではなく、整いへ導くための静かな装置だった。
久しぶりのはなしょうぶは、変わらずそこにあり、変わらず身体を迎え入れてくれた。
また、ここから日常が始まる。
男
[ 三重県 ]
ラムちゃんパーク湯の瀬へ行ってきた。
入浴料は550円。もはや値段がバグっている。
案の定、館内は激混みだった。
夕方になると、近所の老兵たちが示し合わせたかのように集結し、
黙々と汗を流している。
さらに、あの激安で知られていた安濃温泉が休業中という事情もあり、
行き場を失った湯民たちがここへ雪崩れ込んでいるのだろう。
だが、混雑を差し引いても湯は本物だった。
さすがは榊原温泉系。
化粧水のようにとろみのあるぬる湯が肌を包み込み、
仕事でささくれ立った感覚を静かに整えてくれる。
下地はできた。
いざサ室へ。
定員5人ほどの小さな部屋は、当然のようにぎゅうぎゅう詰め。
譲り合いとも、諦めともつかない空気のなかで3セット。
温度は正直そこまで高くなく、20分でも耐えられそうな優しさだが、
水風呂は容赦がない。
キンキンに冷えている。
あれはたぶん井戸水だ。そういう冷たさをしていた。
サ室には、中途半端に懐かしいJ-POPが流れていた。
なぜその選曲なのかは誰にもわからない。
だが、誰も文句は言わない。
ここでは、それも含めて日常なのだ。
風呂を上がる頃には、身体も頭もすっかり軽くなっていた。
派手さはない。だが、確実に効く。
明日からまた仕事を頑張れそうだ。
そんな、実直でありがたい一湯だった。
[ 三重県 ]
今日は、はなしょうぶへ行った。
同僚と、そして妻と。
正月料金で少し高かったが、そんなことを気にする者は誰もいない。
明日から仕事始め。
身を清めておかねばならぬ――
そんな無言の共犯関係で、館内は人でごった返していた。
湯船も、洗い場も、サ室も、すべてが飽和状態。
一年の始まりに、区切りを求める人間の多さを思い知る。
楽しみにしていた22時のアロマロウリュは、今日はなし。
理由は告げられなかったが、肩を落とすには十分だった。
それでも人の出入りが激しく、サウナの温度は70度ほど。
正直、ぬるい。
だが、文句を言いながらも身体は正直だ。
4セット、きっちり整った。
正月も仕事づくしだった私の目は、
湯気の向こうで少しだけ潤んでいた。
それは疲れのせいかもしれないし、
「またここへ戻ってこられた」という安堵かもしれない。
いずれにせよ、今日も私は湯に救われた。
明日からまた始まる日常に、静かに背中を押されながら。
男
[ 三重県 ]
大晦日。
暦の最後の日に、私ははなしょうぶへ来ていた。
数日前、キンクイで派手に転び、膝を盛大に擦りむいた。その傷口から雑菌が入り、気づけば化膿。激痛に耐えきれず病院へ行くと、医者は即座にこう言った。
「今年いっぱい、風呂は禁止です」
年内、禁止。
その言葉の重さを、医者は知らない。
だが、耐えられなかった。
年末の朝イチ、まだ誰の一年も溶け込んでいない、きれいな湯を狙ってはなしょうぶへ向かった。
考えることは皆同じだったらしい。
今年一年の汚れを、最後の日に落としておきたい人間で浴場は満員。
朝イチの老兵勢は、かけ湯だけで即サウナに突撃していく。準備運動という概念は、彼らの辞書にはない。
サ室は朝から満室。
入口には入場制限。
まるで初売りの行列だ。
不思議なことに、外のととのいスペースだけは空いていた。
おそらく老兵どもは、サウナと水風呂を無限ループしており、外気浴という文化を既に卒業しているのだろう。
一時間もすると、今度は若兵たちが雪崩れ込んできた。
浴場の空気が一気に若返る。
人の出入りがあまりにも激しく、その影響かサ室の温度は70度ほど。
正直、物足りない。
だが、久しぶりのサウナはそれを帳消しにするだけの幸福を連れてきた。
私は思い出す。
新年早々、元旦から仕事だという現実を。
それでも今はいい。
今年一年のサ活に感謝を込めて、静かに汗を流した。
この一年も、ちゃんと整えた。
男
[ 三重県 ]
楠温泉の閉じた扉を前にしても、身体はまだサウナを求めていた。
気持ちの行き場を探すように車を走らせ、向かった先は三滝温泉 満殿の湯。
土曜日ということもあり、駐車場の時点で嫌な予感はしていたが、案の定すごい混みようだった。
700円。
このご時世にこの値段は正直ありがたい。
だがその分、人も湯もぎっしりだ。
カランは満席。
代わり湯は改装中で使えず、湯船の数が減っているせいか、浴場は完全に芋洗い状態。
それでも、不思議と不快感はなかった。ここはそういう場所だと、皆がわかっている。
個人的に好きなのは菊正宗の湯。
あの一角だけ、少しだけ空気が落ち着く。
その近くのチェアに腰を下ろし、深く息を吐いた。
整いの最中、ふと楠温泉のことを思い出した。
あの弱々しいシャワー。
止まってしまったサウナ。
もう二度と入れない湯。
目を閉じていたはずなのに、視界がにじんだ。
理由はわかっているから、拭わなかった。
満殿の湯は今日もちゃんと熱くて、ちゃんと安くて、ちゃんと人が多い。
それが少し救いだった。
コスパ最高。
そして、風呂とサウナは今日も人を受け入れてくれる。
また一つ、整いを重ねて外に出た。
[ 三重県 ]
「12月21日をもって無期限休業」
最終日前日の今日、楠温泉へ向かった。
これで本当に最後になるかもしれない。そう思うと、行かないという選択肢はなかった。
だが、到着してすぐに違和感を覚えた。
入口は固く閉ざされ、駐車場には“臨時休業”のパネルがぽつんと立っている。
明日まで営業するはずではなかったのか。
胸の奥に、嫌な予感がした。
その場でSNSを調べて、すぐに理由を知った。
11月18日、ボイラー故障。
予定されていた12月21日を待たず、そのまま休業に入ったという投稿。
11月18日。
それは、私が前回ここを訪れた日だった。
閉店間際の20時半ごろ。
スチームサウナが途中で止まり、残った熱で1セットだけ整えたあの夜。
今思えば、あの瞬間が楠温泉の最後の灯だったのだ。
知らず知らずのうちに、歴史の終わりに立ち会っていた。
そう気づいた途端、胸が締めつけられるように苦しくなった。
昭和8年開業。
ほぼ一世紀にわたり、楠の街で湯気を立ち上らせ続けてきた銭湯。
四日市の公害問題さえも乗り越え、昭和・平成・令和と時代をまたぎ、黙々と人々の身体と心を温めてきた場所だ。
コロナ禍でどこにも行けず、仕事が早く終わっても行き場のなかったあの頃。
不安でいっぱいの毎日のなか、湯船に立つ湯気の静けさだけが、確かに私を支えてくれていた。
楠温泉は、あの時代の自分を受け止めてくれた場所だった。
「休業」
閉店ではなくそう言い続けてくれていることが、最後まで消えずに残ってしまう。
だが正直、この状態から立ち直った街の銭湯を、私はまだ見たことがない。
それでも、感謝だけはどうしても伝えたい。
本当にありがとう。
街の歴史を背負い、時代を越え、
私個人の疲れや不安まで、何も言わずに受け入れてくれた場所。
楠温泉は、確かに私の人生の一部だった。
扉は閉じてしまった。
それでも、この場所に注がれた感謝だけは、今もここに残っている。
[ 埼玉県 ]
今宵は所沢。
私が勝手に「サウナ界のディズニーランド」と呼んでいる King & Queen に来てしまった。平日?関係ない。ここでは曜日という概念がたまに蒸発するほどの駐車具合。
やはり浴場は相変わらずの大盛況。ひょろっとした若者たちが湯に群れ、様子はほぼ猿山。ただし、よく見るとサウナハットを被ったまま風呂に浸かっている輩も少なくない。
ああ、安心した。ちゃんと“わかってる人たち”も多い。ここはやはり聖地だ。
満を持してサ室へ。
激アツ。問答無用。
普段は10分を当然のように回すが、今日は5分で心拍数がレブリミット。身体が「調子に乗るな」と正論を突きつけてくる。素直に従うのが大人の嗜みだ。
そのまま外へ転がるように出て、17度の水風呂へダイブ。
この落差がいい。思考が一気に初期化される。
冬のおかげか、夏場は奪い合いだったチェアも今日は余裕あり。ありがたい。文明の進歩だ。
仕上げに8度のグルシン。
もはや挑戦ではなく、確認作業。
「まだ生きてるな」と自分を確かめて、また一息。
気づけば4セット。
時間も距離も忘れていた。
遠征?いや、巡礼だ。
今日もKing & Queenは裏切らなかった。
男
[ 静岡県 ]
今朝もサウナに入った。
昨晩、寝る直前にサウナを決めたおかげか、目覚めは驚くほど静かだった。深く沈むように眠り、気づけば朝。身体の奥に残っていた疲労が、一段軽くなっている。
起きてすぐ風呂へ向かう。
浴室には、サービスエリアで車中泊を決めたであろう人たちがぽつぽつと集まっていた。皆、言葉は交わさない。ただ朝の温もりを求めて、黙々と湯に身を委ねている。その空気が心地いい。
炭酸泉の吹き出し口を一人占めする。
泡が肌を叩き、血流がゆっくりと目を覚ましていくのがわかる。十分に身体をほぐしてからサ室へ。
最初は75度ほど。
朝にはちょうどいい、やさしい温度だと思っていた。ところが、なぜか徐々に熱が増していく。セットを重ねるごとに数字は上がり、気づけば90度を超えていた。目覚め切っていなかった身体に、はっきりとした輪郭が戻ってくる。
気がつけば3セット。
時計を見ると、チェックアウトの時間が迫っていた。名残惜しさを振り切るように身支度を整え、慌てて暖簾をくぐる。
眠気と熱に包まれた夜。
静かに整えられた朝。
この一晩で、しっかりとリセットできた気がする。
[ 静岡県 ]
東名高速・足柄サービスエリアにあるレストイン時之栖。
仕事を終え、三重から高速をかっ飛ばし、時計が深夜1時を回った頃に入店する。実家へ帰省する際は、ここで一泊するのがいつの間にか自分の中の儀式になっていた。
まぶたは重く、頭はぼんやりしている。
それでも暖簾をくぐると、身体は自然とサウナを求めて動いてしまう。眠気を引きずったままサ室へ。
壁の板には、鍵で彫られた無数のいたずら書き。意味のないはずの線や文字が、熱と眠気のせいで、古代エジプトのヒエログリフのように見えてくる。解読できないまま、ただぼんやりと眺める。
水風呂へ。
夏場は身を切るように冷たく感じたが、冬の今夜はそこまででもない。おそらく15度前後。やさしく身体を締める温度だ。
浴室内のチェアに腰を下ろす。
天井を見上げると、思考はすぐに霧散していく。整いは訪れたが、今夜はそれ以上に眠気が強かった。無理に追い込む必要はない。こういう夜もある。
今日は泊まりだ。
明日の朝も、時間を気にせずサウナに入れる。そう思うだけで、気持ちはすっと軽くなる。
今夜は深追いせず、しっかり休むことにした。
サウナは、逃げない。
[ 三重県 ]
今日も花しょうぶに行ってきた。
21時過ぎまで机に貼り付くように仕事をして、気づけば心も身体も硬くなっていた。
そんな時に届いた妻からのLINE。
「雨降ってるから迎えに行こうか?ついでにサウナいく?」
その一文だけで、何かがふっと軽くなる。
ああ、今日も救われた──そんな気持ちだった。
22時過ぎに入店。
空っぽの胃袋に流し込みたくて、カレーうどん大盛りとレモンサワーBIGを迷わず注文。
暴力的サイズの器と、存在感のあるグラス。
それでもスルスルと体に吸い込まれていき、気づけば完食していた。
じんわりと、心の底に“生き返った感”が芽生える。
廊下ですれ違った同僚2人。
仕事終わりに同じ場所へ導かれるように来ているというだけで、妙な同志感があった。
みんな、それぞれの疲れを抱えて今日ここに来たんだ。
22時半、サ室へ。
いつものオートロウリュ。
安定してるはずなのに、今日はどこかやわらかくて、身体にしみる。
外は風が吹いていたけど、一昨日みたいに骨に刺さる寒さじゃない。
夜の空気が“冷たさ”じゃなく“静けさ”としてまとわりつく。
そして最後に炭酸泉──今日の代わり湯はパインアメ。
甘くて懐かしい香りがふわっと漂って、思わず肩の力が抜けた。
湯気に混じるその香りを胸いっぱい吸い込みながら、気づけばすっかり整っていた。
帰る頃には、明日の自分をほんの少しだけ信じられるようになっていた。
また頑張れる。
そんな確かな温度を抱えて、花しょうぶを後にした。
男
[ 三重県 ]
5日間の海外出張を終え、12時間のエコノミーに身を預け、成田から三重まで移動してきた体は、もはや自分のものとは思えないほど軋んでいた。背骨は一本一本が別々の意見を持ち、肩はどこかの国境線のように固く緊張し、足首は未だ機内の狭い空間をさまよっている。
本当なら布団に倒れ込んで終わりの夜になるはずだった。
──が、スマホに届いた一言で流れが変わる。
「サウナ行きましょう。」
その一文を見た瞬間、疲れた身体のどこか奥で鈍くくすぶっていた火が、ふっと灯るのを感じた。
仲間に呼ばれる嬉しさ。
そして、長旅を終え、自分の“帰るサウナ”に呼ばれたような感覚。
気づけば、寝間着に手を伸ばす代わりに、サウナセットを無言で掴んでいた。
20時45分、花しょうぶに入店。
自動ドアが開いた瞬間、鼻をくすぐるあの独特の香りが漂ってくる。旅先のどんな豪華な施設よりも、この匂いの方がしっくりくるから不思議だ。
サ室は今日も容赦なかった。
湿度と熱気が肌を叩き、呼吸はすぐに浅くなる。
腕時計を忘れてしまったので正確な時間はわからないが、壁の木目の揺らぎ方や、肌に刺さる熱のリズムから察するに——10分は持たなかっただろう。
外気浴スペースに出ると、奇跡的にトトノイチェアが空いていた。
座った瞬間、背中に伝わる冷たさが、長旅でへばった神経をひとつずつ解いていく。
22時のアロマロウリュはジャスミン。
最近はよく遭遇する香りだが、今日のジャスミンは特に沁みた。
疲れた身体の隙間に、ゆっくりと花の香りが満ちていく。
気づけば旅の重さはほとんど抜けていた。
長旅の疲労は、湯気と蒸気とオロポと仲間の笑い声のなかで、静かに蒸発していったらしい。
明日からまた日常が始まる。
だが今夜はただ、「帰ってきてよかった」と思えた。
[ 千葉県 ]
海外出張を控え、三重から成田までの長い陸路移動を終えた頃には、脳みそまで埃っぽくなっていた。東横インの部屋にバッグを落とし、無言で天井を見上げたあと、「このままじゃ明日に響く」と自分を叱咤するようにスマホを開いた。
そこで目に飛び込んできたのが、妙に評価の高い“成田空港温泉 空の湯”。なぜか呼ばれた気がして、仕事終わりの体ひとつで外に出た。
空の湯の暖簾をくぐると、まず腹が訴えてきた。かき揚げうどん大盛りを頼むと、やって来たのは“重力を無視したレベル”の巨大かき揚げ。サウナ前の炭水化物補給としてはやりすぎだが、旅先の夜だから許される。胃が落ち着いたところで、いよいよサウナへ。
サ室にはオートロウリュの装置らしきものが鎮座していたが、肝心の発動タイミングはつかめなかった。それでも熱の質は申し分ない。“これだ”と小さく息が漏れる。目を閉じると、明日から始まる海外仕事の緊張や、長距離移動の疲れがサラサラと剥がれ落ちていくようだった。
外気浴スペースに出て、思わず足が止まった。
そこには、50インチ超のモニターで映し出されるフライトレーダー24。
今まさに降りてくる機体、あの滑走路に向かって加速していく機体。
満月に照らされた成田の空気のなかで、飛行機たちが規則正しく呼吸しているように見えた。
その光景を眺めながら椅子に沈み込むと、「旅の始まりにこんな整い方があるのか」と胸の奥がじんわりほどけた。
そして水風呂。井戸水という言葉の素朴な響きからは想像できないほど澄んだ冷たさで、皮膚の表面ではなく“輪郭”だけをすっと冷やすような不思議な感覚があった。これがクセになりそうで、帰る前からもう恋しかった。
気づけば時間はとうに最終バスを過ぎていた。
慌てて外に飛び出したものの、停留所には誰もいない。
夜風が少し冷たかった。
2500円ほどのタクシーに揺られてホテルへ戻る道すがら、窓の外に広がる成田の深夜を眺めながら思った——
「まぁ、これも旅の味だな」と。
明日は12時間のエコノミー。
だが不思議と、恐怖や憂鬱よりも、今日の整いの余韻がまだ体の中で灯っている。
空の湯は、旅の序章としては出来すぎなくらいだった。

男
[ 三重県 ]
今年一番の寒気が流れ込んだらしい。平野部でも雪が降り始めたとニュースで耳にし、鈴鹿も例外ではないのだろうと窓の外を見た。北風は鋭く、街灯の下を吹き抜けるたび、空気の色さえ変えてしまいそうだった。
こんな夜に外で整うなんて正気じゃない——そう思いながらも、気づけば足は花しょうぶへ向かっていた。身体が寒気を聞きつけ、自動的に暖へと逃げ込もうとしたのかもしれない。
21時半、いつもと変わらぬ時間に入店する。
驚いたことに浴場は普段より混み合っていた。寒さは風呂への導火線らしい。ただ、サウナ室だけはぽっかり空白のように静かだった。代わりに、入ってくる人々の頭にはサウナハットがやけに目立った。今日は本気で整えにきている“同類”が多いのだと悟った。
22時のアロマロウリュが始まる。
店員が蒸気にジャスミンを落とすと、香りは一瞬でサ室の空気を塗り替えた。甘さと冷たさの境界を曖昧にするような匂いが、胸の奥まで染みこんでくる。
そしてその直後、ブロアの暴力が襲う。
熱が肌を叩き、乳首のあたりに刺すような刺激を残していく。痛みと快感の境目が分からなくなる、あの花しょうぶらしい時間だ。
「好評のクールシャンプー、残り4本となりました」
どこか遠くで店員の声が響き、妙な安堵が胸の底に沈んだ。年内の使い切りを心配していた自分が可笑しい。
外のトトノイチェアは、まるで忘れられた家具のように静かだった。
北風が容赦なく吹きつける中で、ここに腰を下ろそうとする者はほとんどいない。私も半ば意地で座ってみたが、風は肌を切り裂くようで、体温は急速に奪われていった。乳首すら即座に冷える、冬のブロアである。
しかし、最初の数分だけは別だった。
熱が体の芯からゆっくり逃げていく感覚——
その一瞬だけ、世界の雑音がすべて遠ざかり、凍った夜気がやさしく体を包んでくれた。冬だけが持つ、儚い整いがそこにあった。
師走を迎えたが、私のサウナはまだ終わらない。
むしろ、この寒さこそがサウナ物語の続きを書こうとしている。
男
[ 三重県 ]
今日は津の銭湯・朝日湯へ。
激務だった11月のラスト、締めくくりにはやっぱり銭湯の熱が必要だと思った。
ここは数年前まで“敷島湯”だった場所。オーナーが変わり、名前も変わり、それでも街の湯として生き続けている。こうして灯りが消えずに残ってくれているのが、本当にありがたい。
サ室に入った瞬間、ふわっと鼻をくすぐるいい匂いがした。
ヒノキのアロマでも焚いてるのかと思うほど、落ち着く香り。
銭湯のサウナでこういう香りに出会うとは思っていなかったので、ちょっとしたサプライズだった。
サウナはアツアツ。
背中に立派なモンモンを背負ったお兄様方と肩を並べ、黙々と2セット。
温度計は82度あたりだが、体感はそれ以上に鋭く、皮膚をしっかり刺してくる熱さ。
無駄が削ぎ落とされた“ザ・銭湯サウナ”の力強さを味わった。
水風呂はおそらくチラーなしの水道水。
だけどこの素朴さも銭湯の味。
キンキンではないが、サ室の熱との落差で十分に気持ちが引き締まる。
外気浴はない。
だからこその“脱衣所整い”。
昭和の空気が残るあの空間でクールダウンしていると、妙に心が静まっていく。
たまにはこういう整い方も悪くない。
明日からいよいよ師走。
とはいえ、私の業界は年末が特段忙しいわけじゃない。
でも今日の朝日湯でしっかり締められたおかげで、また明日から落ち着いて働けそうだ。
いい銭湯だった。
男
日程や人数、部屋数を指定して、空室のあるサウナを検索できます。