JPng

2026.05.30

1回目の訪問

広島の土曜日は、思っているよりも静かだ。

元宇品の海沿いを50分ほど走る。潮の匂いを吸い込みながら、身体の奥に溜まった澱のようなものを汗と一緒に吐き出していく。ランニングの終盤にはシャツも肌に張り付き、自分がどれだけ疲れていたのかを思い知らされた。

そのまま向かったのは、以前から気になっていた「いなり湯」。

広島のサウナ好きたちが口を揃えて名前を挙げる街銭湯だ。派手な設備があるわけではない。それでも人が惹かれる場所には、理由がある。

サウナ室に腰を下ろすと、その理由が少しだけ分かった気がした。

熱は鋭くない。けれど確実に身体の芯へ入り込み、じわじわと汗を引き出していく。逃げ場を与えない優しさ、とでも言えばいいだろうか。

6分を2本。

十分だった。

そして水風呂。

冷たすぎず、ぬるすぎず。誰かが長い時間をかけて答え合わせをしたような温度。身体を沈めるたびに、さっきまで抱えていた小さな苛立ちや焦りが、静かに剥がれ落ちていく。

だが、この店の主役は別にいた。

薬湯である。

浴槽に近づいた瞬間から独特の匂いが鼻を刺す。正直に言えば、決して良い香りではない。むしろ怪しい。けれど、その濃厚な薬草の匂いに包まれていると、不思議と身体の奥まで何かが染み込んでくるような気がする。

効くかどうかではない。

効いてほしいと思わせる力があるのだ。

湯上がりには缶ビールを一本。そして伊良コーラ。

火照った身体に流し込むと、胃の奥で小さな幸福が弾けた。

特別な出来事は何もない。

けれど、そんな日ほど後になって思い出す。

ああ、あの日は良い土曜日だったな、と。

ドライサウナ6分×2
水風呂×2
外気浴×2

広島の街は今日も変わらずそこにあって、私はまた少しだけ元気になって帰るのである。

JPngさんのいなり湯のサ活写真
JPngさんのいなり湯のサ活写真
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