2023.06.18 登録
[ 北海道 ]
札幌の朝。快晴である。
昨夜はさすがに力尽きた。サウナまで辿り着く前に、身体が「もう無理だ」と勝手に電源を落としてしまったのだ。そんな日もある。旅は、思い通りにならないくらいがちょうどいい。
だから今日は朝サウナ。
26階の静かなサウナ室は、朝にはちょうどいい熱さで、眠った身体をゆっくり起動させてくれる。6分だけ蒸され、水風呂へ。キリッとした冷たさが頭の奥まで染み渡る。ああ、目が覚める。今日という一日がようやく始まった気がする。
……と思ったのも束の間。
外気浴で札幌の風を浴びていると、今度は眠気がふわりと戻ってくる。都会の朝の風は、子守唄にもなるらしい。まったく困ったものだ。
さて、もう少しだけ札幌の朝を歩いてみよう。
コーヒーでも飲むか。それとも、知らない路地を曲がってみるか。
旅は、サウナを出たところからまた始まるのである。
サウナ6分×1
水風呂×1
外気浴×1
[ 北海道 ]
定山渓をあとにして、札幌へ。
旅は不思議だ。同じ北海道なのに、登別とも定山渓とも、湯も熱も空気も、まるで別の生き物みたいに姿を変えてくる。
本日の寝床は、札幌ホテル by グランベル。
舞台は26階。ガラスの向こうには札幌の街がびっしり広がっていて、その景色を眺めながら80度ほどのドライサウナでじわじわ焼かれていく。都会らしい静かな熱である。
6分を2本。頃合いを見て水風呂へ飛び込む。18度前後だろうか。でも数字以上に肌へ刺さる。キン、と冷えた輪郭をまとった水が、火照った身体を一瞬で都会仕様へと書き換えていく。この水は山の水じゃない。街の水だ。洗練されていて、少しだけ無機質で、それがまた妙に気持ちいい。
インフィニティチェアに身体を預けると、札幌の風がビルの谷間を抜けて頬をなでる。山を眺める外気浴とは違う。ネオンも道路も人の営みも全部ひっくるめて風景になっている。その真ん中で、ただぼんやり浮かんでいる。
北海道のサウナ旅、まだまだ同じ景色なんて一つもない。
だから、次の一湯もきっと裏切ってくれる。
そして、北海道のニシンは、本当に美味しい。
サウナ6分×2
水風呂×2
外気浴×2
[ 北海道 ]
本日も朝イチから鹿の湯へ。
男女入れ替えで、今日はあのサークル型サウナの日だ。本当は温泉と水風呂を行ったり来たりする交互浴だけで済ませようと思っていた。思っていた、だけである。
目の前にサウナがあるのに、入らないなんて選択肢、人類にはまだ実装されていない。
気づけば扉を開け、座り、ちょうど始まったオートロウリュに巻き込まれる。熱が降ってくる。ぐわっと膨らんだ蒸気が身体を包み込み、皮膚という皮膚を一気に焼き上げる。6分で限界。水風呂へ飛び込み、もう一度。同じ流れを2セット。完全に術中である。
そして外気浴。
渓谷を抜ける風が火照った身体をゆっくりほどいていく。その静けさを破るように、どこからともなくミンミンゼミの声が響いた。
ああ、夏だ。
北海道にも、ちゃんと夏は来る。
その鳴き声は季節の合図みたいで、サウナで空っぽになった頭の中へ真っすぐ落ちてくる。
朝からこんな体験をしてしまったら、今日はもう何が起きても悪くない気がする。
鹿の湯、やはり恐るべし。
サウナ6分×2
水風呂×2
外気浴×2
[ 北海道 ]
登別をあとにして、定山渓へ。
目的地は、鹿の湯。
昨年11月、ここで浴びた熱と水の記憶が身体のどこかに残っていて、それを確かめに帰ってきたようなものだ。
やっぱり、裏切らない。
サウナの4段目は容赦なく熱い。
じわじわじゃない、ちゃんと牙を剥いてくる熱。
それを6分受け止めて飛び込む16度前後の水風呂が、もう反則級にやさしい。北海道の水はどうしてこんなにも柔らかいんだろう。
身体が溶けるようにほどけていく。
さらにグルシンの痺れ水。
キンと刺さる冷たさなのに、それが欲しかったんだと身体が勝手に納得してしまう。この2種類の水風呂を行き来できる贅沢。
完成されている。
そして、渓谷を眺めるインフィニティチェアへ。
風が木々を揺らし、その音だけがゆっくり耳に届く。
気付けば時間の感覚なんてどこかへ消えていて、ただ、ぼんやりと空を眺めている自分がいる。
ああ、やっぱり鹿の湯はすばらしい。
でも、ここで旅は終わらない。
北海道には、まだ知らない熱があって、まだ出会っていない水がある。その続きを追いかけるために、また次の湯へ向かう。
サウナ6分×2
水風呂×2
外気浴×2
[ 北海道 ]
登別の朝。雨。
だけど、この雨がいい。
山の木々を叩き、湯けむりを濃くし、世界を少しだけ静かにしてくれる。昨夜、鬼に叩きのめされた身体は、朝になると熊に迎え入れられる。
今日は竜胆の湯。鬼サウナではなく熊サウナの日。昨日みたいな「うおおお!」という派手な熱狂はない。だけど、こっちは渋い。じわじわ効く。古いウイスキーみたいなサウナだ。
天井には松ぼっくりがびっしり敷き詰められ、正面には「ここは俺の山だ」と言わんばかりの熊の木彫り。そこへ水をかける。その名もウォーリュ。なんとも豪快なネーミングである。ジュワッ、と湿度が立ち上がる。熱は暴れない。ゆっくり、確実に身体の奥へ染み込んでくる。派手じゃない。でも深い。こういうサウナ、好きだ。
沢水掛け流しの水風呂もまた、朝にはちょうどいい。冷たいのに角がなくて、眠気だけをさらっていく。雨の外気浴では、森の匂いまで身体に染み込んでくる気がした。
そういえば、今日はパートナーが鬼サウナ側だったな。あの鬼どもの容赦ない熱波に、無事でいるだろうか。泣いてないだろうか。いや、案外ケロッとして「最高だったよ」なんて笑っているのかもしれない。それなら、それで悔しい。
熊サウナ 6分×2
水風呂×2
外気浴×2
※まさかの写真撮影OK🙆というサービス付
[ 北海道 ]
昨日まで函館。今日は登別。北海道は距離感まで北海道だ。バスに揺られて山へ向かう。窓の外は、笑っちゃうくらいの土砂降り。でも、この雨がいい。外気浴じゃない。空そのものがシャワーになって、身体ごと洗い流してくれる。
目的はもちろん、ととのえ親方が手掛けたという鬼サウナ。
宿に着いて浴場へ入るなり、まずスケールがおかしい。ローマ風の巨大浴場がど真ん中に鎮座し、その周囲を鉄泉や塩泉や硫黄の湯がぐるりと取り囲む。テーマパークか。いや、温泉が本気を出したらこうなるのか。その片隅にはセルフロウリュのできる清流サウナ。そして1人サイズの源泉掛け流し水風呂。これだけでも十分に勝負できる。
なのに、その奥に本命がいる。
鬼サウナ。
手前には深さ170cmほどの樽水風呂。
もう、この時点で嫌な予感しかしない。
扉を開ける。熱い。いや、違う。熱が殴ってくる。ちょうどロウリュの直後。蒸気が牙を剥き、肺まで焼かれるような感覚。3分でギブアップ。敗走。樽水風呂へ飛び込み、そのまま豪雨の中で寝転ぶ。
雨が顔を叩く。冷たい。水風呂が冷たい。空も冷たい。でも身体だけが異常に熱い。
ああ、これか。
北海道は優しく迎えてくれる場所じゃない。試される大地って、こういうことだったのか。
その後も2度挑む。どちらも5分持たない。完敗。でも、あまみは瞬間湯沸かし器みたいに全身へ咲き、水風呂はどこまでも柔らかい。負けるたびに気持ちよくなるなんて、意味が分からない。
温泉もすべて巡り、気づけば1時間。大雨の登別で鬼に鍛えられたような時間だった。
最高だ、北海道。
鬼サウナ 3〜5分×3
清流サウナ 10分×1
樽水風呂×4
外気浴×4
[ 北海道 ]
北海道2日目。
舞台は、OMO5函館 by 星野リゾート。7泊8日という、ちょっとした旅の始まりだ。ここからしばらく、サウナと温泉と銭湯だけを追いかける生活に突入する。こういうのを、人は贅沢と呼ぶのだろう。
OMO5は、いかにも星野リゾートらしい。肩肘張らないのに、ちゃんとラグジュアリー。背伸びをしなくても、気持ちだけがふわりと持ち上がる。
まずは温泉。硫黄の香りがぶわっと鼻を抜ける。土色に濁った湯は、「効くぞ」と一切隠そうとしない。身体が湯に溶かされるというより、湯が身体を書き換えていくような感覚。
ドライサウナは80度前後。じわじわ攻めてくるタイプ。でも、今日の主役は間違いなくスチームサウナだった。扉を開けた瞬間、蒸気が牙をむく。熱い。なのに気持ちいい。肺まで熱が入り込んで、全身が蒸し器の中の肉まんみたいになっていく。最近どうも、この高温スチームに縁がある。いや、もしかすると向こうが僕を選んでいるのかもしれない。
水風呂は18度くらいか?
柔らかい。北海道の水は反則だ。冷たいのに刺さらない。ただ、包み込んでくる。気づけば時間を忘れて漂ってしまう。
外気浴は椅子だけ。でも、それで十分だった。函館の風は派手なことをしない。ただ静かに身体を撫でて、「また来いよ」とだけ言う。しかも、このあと夜にも、明日の朝にも入れる。ホテルサウナの連泊って、こういう幸福がある。
というわけで、しばらく北海道サウナ編、開幕です。
スチームサウナ10分×1
ドライサウナ6分×2
水風呂×3
外気浴×3
[ 東京都 ]
久しぶりに、東京でちゃんと息をしている気がする。
誰とも会わない。酒も飲まない。スマホも放り投げて、家でダラダラ、ダラダラ。脳みそを溶かすみたいに何もしない時間。こういう日が、実は一番贅沢なんじゃないかと思う。でも、人間って不思議で、ずっと部屋にいると、身体のどこかが「外へ行け」と騒ぎ始める。
そうだ。サウナだ。
夜の調布。行き先はもちろん鶴の湯。
21時の銭湯は、昼とはまるで違う生き物だった。子どもが湯船ではしゃぎ、お父さんが笑い、お母さんが「ほら、静かに」と追いかける。その声が浴場の天井に跳ね返って、夏の夜そのものになっている。ああ、この景色、昭和とか令和とか、そんな名前よりもっと強い何かだ。銭湯という文化は、人間が人間である限り、生き残りつづけるのかもしれない。
湯船には黄色いアヒルがぷかぷか浮いていて、サウナではどうでもいい話が延々と続く。「今日は暑かったねえ」「そうですねえ」。そのどうでもよさが、とてつもなく愛おしい。脱衣所の扇風機は今日も首を振り続け、火照った身体をゆっくり冷ましていく。
派手な出来事なんて何ひとつない。でも、こういう夜が、気づかないうちに人間を修復している。家を出てよかった。鶴の湯に来てよかった。夏は、まだ始まったばかりだ。
スチームサウナ10分×2
バレルサウナ6分×1
水風呂×3
外気浴×3
電気風呂6分×1
[ 東京都 ]
どうにも膝が痛い。
なんだこれ。ここ最近の旅の積み重ねか。先日のサイクリングの代償か。それとも、容赦ないマッサージ師さんに身体を分解されかけた反動なのか。理由は分からない。でも、日に日に痛みは薄くなっている。ならば最後のひと押しだ。「これは電気風呂案件だろう!」と都合のいい理由を掲げて、今日も鶴の湯へ避難する。
やっぱり、ここはいい。
身体を洗い、まずは電気風呂。ビリビリと筋肉の奥まで電流が入り込み、「まだ動けるぞ」と細胞が目を覚ます。そのまま灼熱のスチームサウナへ。湿度という暴力が全身を包み込み、汗が一気に噴き出す。続いてバレルサウナでじっくり追い込み、源泉掛け流しの水風呂へ飛び込む。この水がまた反則級にやさしい。冷たいのに丸い。ずっと浸かっていたくなる。井戸水って、こんなにも身体を受け止めてくれるものだったか。
そして外気浴。
夏はまだ助走中。だけど陽射しは確実に季節を前へ押している。風が肌を撫でるたび、「もうすぐ蝉が鳴くな」と思う。真夏になれば、この場所はもっと完成形になる。蝉の大合唱をBGMに、ととのい椅子で世界からログアウトする未来が見えてしまう。
昼下がり14時の鶴の湯ビバーク。
膝も少し軽くなった気がする。たぶん気のせいでもいい。身体が前を向く理由なんて、そのくらいで十分だ。
さあ、もうひと頑張り。仕事に戻ろう。
スチームサウナ6分×2
バレルサウナ6分×1
水風呂×3
外気浴×3
電気風呂6分×1
[ 東京都 ]
飲食店の仕込みの合間。ほんの少しだけ時間が空く。その「少し」が命綱みたいな日がある。だから店から徒歩5分の湯守の里へ。50分一本勝負。時計を見た瞬間から、もう勝負は始まっている。
仕込みでまとわりついた汗と疲労を、まずはあの真っ黒でトロトロの湯に沈める。肌じゃない、身体そのものが溶けていく感覚。そして電気風呂。ビリビリ、じゃない。身体の奥に潜んでいた疲れを一匹ずつ追い出していくみたいな刺激。よし、ここだ。スチームサウナへ突入。俺には50分しかない。1分だって無駄にはできない。
このスチームサウナは派手じゃない。でも静かに、確実に追い込んでくる。10分。じわじわ蒸され、身体の芯まで熱が侵食してくる。そのまま外へ飛び出し、池みたいな水風呂へダイブ。ここ、本当に鯉が泳いでいても驚かない。自然と人工の境界線が曖昧で、水に包まれた瞬間、身体が「再起動する」。
そのままベンチへ倒れ込む。ベローンと全身を預ける。耳に入ってくるのは虫の声だけ。誰かが選曲したヒーリングミュージックなんかより、何百倍も贅沢だ。池、最高。外気浴、最高。たった50分なのに、時間の密度だけは2時間分ある。
そしてまたエプロンを締め直して、夜の営業へ戻る。火を使い、人と話し、皿を運ぶ。その前に一度、自分自身をちゃんと整えておく。このループ、危険だ。クセになる。調布の夜には、こんな秘密のリセットボタンがある。
スチームサウナ10分×2
水風呂×2
外気浴×2
[ 埼玉県 ]
ちょっと人に会いたくなって、車を転がし埼玉県戸田市へ。目的地まで約1時間。遠出と呼ぶには近すぎる。でも、こういう距離感の旅ほど、不意打ちみたいな発見を連れてくる。
知り合いと話し込んだあと、そのままチャリで荒川沿いを流す。風は強く、脚はどんどん重くなっていく。いいぞ、その疲労。身体が悲鳴を上げ始めた頃が、サウナのいちばん美味しいタイミングなんだ。
飛び込んだのは、健晃湯。
浴室に入った瞬間、「あれ?」と思う。据え置き型のシャワー。ホースがない。あ、この感じ。調布の鶴の湯だ。身体が勝手に記憶を引っ張り出してくる。
そしてサウナは潔くスチーム一本勝負。
これがまた、容赦がない。蒸し器の中に放り込まれた肉まんって、たぶんこんな気持ちなんだろう。湿度が逃げ道を塞ぎ、熱が皮膚じゃなく細胞そのものを蒸し上げていく。派手じゃない。でも強い。ジワジワじゃない。グイグイくる。
そこから22度の水風呂へ。
冷たすぎない。だからこそ、いつまでも沈んでいられる。熱がゆっくりほどけていく。その速度が、妙に心地いい。
……いや、これ、戸田の健晃湯なのに、どこか鶴の湯と血が繋がってるんじゃないか?
もちろん違う。でも、街銭湯が持つ「帰ってきた感」は、きっと全国共通なのかもしれない。
知らない街へ行って、知らない風景を見て、最後は地元の人たちの日常に混ざるように湯へ浸かる。その締め方が、やっぱり最高だ。
戸田市。思っていた何倍も面白かった。また、ふらっと来よう。
スチームサウナ6分×2
水風呂×2
外気浴×1
[ 滋賀県 ]
ことゆう、あがりゃんせをあとにして、今日からは琵琶湖マリオットへ。旅先で宿を移るたび、自分も少しだけ別の人間になるような気がする。
外資系の高級ホテルらしく、浴場もサウナもどこか品がある。90度のドライサウナは、ロウリュがなくても十分すぎる熱をまとい、静かに身体の奥まで温めてくれる。一方、水風呂は20度ほどだろうか。冷たいというより、包み込むようなやさしさで、まるでプールに身を沈めるような感覚だった。
先程飲んだ酒がまだ身体に残っているせいか、その温度が妙に心地いい。刺激ではなく、許されるような冷たさ。そんな水風呂も悪くないと思えた。
そして何より今日は月曜日。温泉もサウナも誰ひとりいない。広い浴場を独り占めしていると、贅沢というものは豪華さではなく、誰にも邪魔されない時間なのだと気づく。
湯気だけが静かに立ち上る浴室で、少しずつ思考までほどけていく。
こういう一日があるから、また旅を続けられるのだろう。
ドライサウナ6分×2
水風呂×2
外気浴×1
[ 滋賀県 ]
本日も引き続き、あがりゃんせ。
ことゆうの宿をチェックアウトした人だけが手にできる無料券。この1枚が、旅の続きを勝手に延長してくれる。10時オープン、10時5分入館。こういう5分が、その日の幸福を決めることってある。
まずはバレルサウナ。朝だというのに容赦がない。木桶の中は昨日よりも熱く、皮膚という皮膚が一瞬で「起きろ」と命令される。扉を開けば、真正面には快晴の琵琶湖。あまりにも青くて広くて、自分の悩みなんて湖面に落ちた砂粒くらいのサイズにまで縮んでしまう。
そして横の水シャワー。たぶん10度前後。冷たい、じゃない。身体の輪郭を書き換えられるような冷たさだ。熱を奪われるたび、細胞が新しい朝を始めていく。
そのままロウリュサウナを2セット。蒸気が襲ってくる。いや、襲われに来ているのはこっちか。熱波を浴びて、水風呂へ飛び込み、外気浴。視界の解像度が一段階上がる。朝なのに、今日という1日をもう1回始められそうな気がする。
それにしても、あがりゃんせは恐ろしい施設だ。
浴室エリアの自販機でビールが買えるのである。
誰が考えたんだ、この天国仕様は。湯上がりに「まあ1本だけ」と誘惑してくる悪魔が、自販機の中でキンキンに冷えて待機している。理性と本能の最終決戦が、サウナ室ではなく自販機の前で始まる。
琵琶湖を眺め、熱に焼かれ、水に叩き起こされ、最後はビールに微笑まれる。
これ、もうスパじゃない。
人類を甘やかすために設計された、完全なる楽園である。
ロウリュサウナ 8分×2
バレルサウナ 6分×1
水風呂×3
外気浴×3
[ 滋賀県 ]
なかなか自分の行動半径から外れた場所まで流れ着いてしまった。滋賀、雄琴、あがりゃんせ。目的地というより、旅の流れに押し流されて着いた場所だ。そういう偶然は、たいてい当たりか大当たりかのどちらかで、今回は完全に後者だった。
天下一品の会長がつくられたスパらしく、館内には会長の写真があちこちに飾られている。思わず笑ってしまう。でも、その笑いはすぐに納得へ変わる。ここまでサウナを仕上げる人間は、間違いなくサウナが好きだ。好きじゃなきゃ、この細部にはたどり着けない。
ロウリュサウナは大箱なのに死んでいない。熱がちゃんと生きている。そして時間になると熱波師が現れ、空気そのものを書き換える。続いてバレルサウナでもまたロウリュ。気づけば館内のどこかで誰かが熱波を送っている。まるでイベントではなく、呼吸みたいに当たり前のリズムで熱波が巡回している。
そして水だ。
滋賀の温泉は地下から湧いた水を温めれば温泉、そのままなら地下水掛け流しになるらしい。だからなのか、水風呂が異様にやわらかい。冷たいのに刺さらない。身体の輪郭だけを静かに溶かしていく。これだ。サウナの完成度は結局、水が決める。
温浴も異様なくらい種類が多い。湯から湯へ、サウナから水風呂へ、外気浴へ。導線が一筆書きみたいにつながっていて、気づけば時間という概念ごと蒸発している。
しかも今回は併設の「ことゆう」に宿泊。宿泊者はあがりゃんせが入り放題。チェックアウト後まで利用できるという、ご褒美みたいな特典付きである。
帰る理由が、ない。
初めての雄琴。初めてのあがりゃんせ。
旅はこういう裏切りがあるからやめられない。また一つ、地図の中に「帰ってきたい場所」が増えてしまった。
ロウリュサウナ8分×1
バレルサウナ10分×2
水風呂×3
外気浴×3
日程や人数、部屋数を指定して、空室のあるサウナを検索できます。