2026.06.14

1回目の訪問

【灯火】2026/06/14.
岸見の石風呂から車で20〜30分。午後は阿弥陀寺の石風呂へ。毎月第一日曜は500円(薪代)で体験できるが、この日は第二日曜。防府観光コンベンション協会の貸切プランを利用した。通常56,000円のところ、キャンペーンで39,000円。4人で一人1万円弱だ。500円と比べれば桁違い。でも、住職から聞く東大寺再建の話と石風呂の体験を含めれば、むしろ破格だった。

財源、用材、人手、輸送。重源上人が束ねた再建事業を、疲労回復や治療を担った石風呂から眺め直す。まさに“風呂ジェクト”。

阿弥陀寺は「西のあじさい寺」。6月の境内は約80種・4,000株の紫陽花で賑わう。小川沿いの静かな一角に、ドーム型の石風呂がひっそり現れた。藁を混ぜた土壁のところどころから、赤レンガの下地がのぞく。

火入れは朝7時。我々が入ったのは14時頃で、温度計は87℃。岸見の一番風呂よりずっと入りやすい。四つん這いで潜る低い入口には年季の入った木戸、ただし「珍百景」ステッカー付き。歴史に浸る間もなく、心の中でツッコミを入れる。

中は石積みを金網で覆い、天井は八角錐。木戸の隙間から入る外気が天井の穴へ抜けるようで、熱いのに息苦しくない。横になると、石菖をなでる風が心地よい。明るい室内で4人が車座になり、20分ほど会話が止まらなかった。

石室の熱気で汗だくになった後、外の空気が沁みる。石風呂で温めた卵は温泉卵のような色で、ほんのり塩味。囲炉裏のある畳の間では、近所の方がお茶を飲んでいた。

岸見との違いは灰の扱いにもある。石室から出した灰を、板間の大きな囲炉裏へ運ぶひと手間。そこで休むと、石風呂の熱が人の会話へ引き継がれるようだった。

この石風呂を守るのは、いま2人のボランティア。火入れ、灰出し、温度の見極めを、月一回と貸切の日に担う。

約840年前、東大寺再建に従事する人々を温めた施浴の思想は、いまも熟練と手間の上に灯っていた。

──労働者の汗を流すための、無骨な実用性を今に伝えるように感じた「岸見」。
──訪問者を優しく迎え入れる、施浴の精神が息づくように感じた「阿弥陀寺」。

異なる二つの古式石風呂を一日でハシゴし、肌に刻まれた熱を通して構造の違いを五感で理解できた。何よりの収穫だった。

日本の伝統サウナの深淵は、まだ奥深い。香川・さぬき市の「塚原のから風呂」、山口・周防大島の地家室の石風呂にも、いつか必ず足を運びたい。

先人たちが遺し、今なお守られる灯火を追う私のサ旅は、まだ始まったばかりだ。

湯さんの東大寺別院阿弥陀寺 石風呂のサ活写真
湯さんの東大寺別院阿弥陀寺 石風呂のサ活写真
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