灼熱と覚醒のあいだに

上野で泊まるなら北欧、という選択をする人間は、たぶん二種類いる。

「サ道のあそこか」と聖地巡礼的な好奇心で来る人と、「昨晩も」という言い方が自然に口から出るようになった人と。私はとっくに後者だ。

北欧は1992年創業。
上野駅浅草口から徒歩1分という立地で、長年「東北からの出張客を迎える宿」として機能していた。いまやサウナーの聖地として語られるようになったが、施設そのものは開業当初とほぼ変わっていない。
変わったのは時代の方だ。
人々がようやく、この場所の正体に気づいたと言える。

特徴的な赤い外壁の建物に入ると、まず更衣室がある。
館内着があるのが地味にうれしい。
長居が前提の施設だと、自然と体がそれを知っている。

第1サウナ室は、フィンランドのSAWO社製ストーブを使用し、室温110℃を超える。熱反射板によって熱がまんべんなく拡散し、赤いタイルと赤みがかった照明が視覚から「ここは灼熱の場所である」とこちらの脳に通達してくる。7〜8分でもう充分、というのは誇張でも弱さでもない。それほどの密度がある。セルフロウリュをすれば白樺の香りが室内に広がる。目が醒める。本当に、文字どおりに。

静寂を求めるなら第2サウナ室へ。テレビがないぶん、自分の内側と向き合う時間になる。ベテランのサウナ愛好家たちが黙って汗をかいている空間は、妙な連帯感がある。言葉を交わさなくても、同じものを目指している気配が満ちている。

水風呂を経て、露天風呂へ。「トゴールの湯」と呼ばれる新潟県栃尾又温泉付近産出の鉱物を使った湯で、上野駅から歩いて1分の場所にいるとは思えない開放感がある。空が見える。都市のノイズが遠くなる。
ここ本当大好き。
いつもただいまという言葉と一緒に孤独をとことん楽しむ場所である。
本を持ち込めたらもっと良いんだけどな。

ここからが北欧の本領だと私は思っている。
施設側が「外気浴こそが北欧の強み」と明言し、季節に応じてサウナ温度・水風呂温度を微調整しているという。
老舗なのに、あきらめていない。その細やかさが身体に届く。

ととのったあと、カプセルに戻ると深く眠れた。
翌朝5階のレストランで朝定食を食べながら、「昨晩もよかった」と思った。「また来よう」ではなく「また来ることになるだろう」という静かな確信として。

北欧には、人を元の自分に戻す力がある。
疲れていたことすら忘れて踏み込んだ場所で、「あ、私はこういうものだった」と思い出させてくれる。
それがここの、ちょっと怖いくらいのパワーだ。​​​​​​​​​​​​​​​​

ペンネーム:湯気文吾(宮崎直哉)さんのサウナ&カプセルホテル 北欧のサ活写真
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