芯は、一度温まると冷めにくい

47歳。神田の同窓会の二次会で、朝までカラオケをやってしまった。いわゆるオールである。「やってしまった」は大嘘で、本当は楽しくて止まらなかっただけだ。この歳でまだこんなに遊べるのか、と自分に拍手したいくらいだった。

幼馴染というのは反則的に楽しい。会って五分で小学生、十分で中学生に戻れる。早送りの逆再生である。住む場所も、仕事も、家族構成も、髪の量も立派に変わった。髪については、お互い触れない。大人のマナーであり、ささやかな平和条約だ。それでも芯だけは変わらない。一度温まった鉄鍋みたいなもので、火を止めても、しばらく上機嫌で熱を持っている。だから何時間歌っても飽きない。

夜通し歌うのは、まぎれもなく消耗だ。声を出し、笑い、騒ぐ。体力はみるみる減る。なのに、減るほど楽しくなるのだから不思議である。人と過ごす夜は、燃料を景気よく燃やしながら、その火で温まっている。要するに、楽しい焚き火だ。

朝、仲間の店でコーヒーを二杯いただいた。一杯目は昨夜への祝杯、二杯目は今日への乾杯である。淹れてくれたのも同窓生だと思うと、缶コーヒーでは絶対に出ない味がした。朝がこんなに美味くなるなら、こんな良い魔法はない。

そのまま、うきうきと電車でサウナ北欧へ。
風呂にも入らず休憩室へ直行し、満足しきって電池が切れた。
気づけば六時間、妻の電話で起こされる。
サウナに来て最初にやったことが爆睡。
入浴料を宿泊費と呼びたい、贅沢な使い方だ。

ここからが、夜と正反対なのに、これまた楽しい。同窓会が「出す」楽しさなら、サウナは「戻す」楽しさだ。座って、汗をかいて、水にどぼん。外気浴で全身がほどけて、思わずにやけてしまう。窓の向こうは見事な晴天。完全なる朝。トゴールの湯はいつもより輝いて見えた。朝まで歌って疲れ果てていたはずが、整うほど元気が湧いてくる。北欧は、削る場所ではなく、芯から温め直す遊び場なのだ。サウナ二回、水風呂二回、プレインスリープのマットレスで全身まるごと日光浴。完璧。気持ちよくて、笑ってしまった。

向きは真逆なのに、どっちも楽しくて仕方がない。夜は人と騒いで芯を温め、朝はひとり黙って温め直す。出すと戻す、にぎやかと静か。両方とも、芯にちゃんと火を入れて、にやにやしている。

結局、温かい芯をいくつ持っているか。47歳の上機嫌は、それで決まる。騒げる相手と、ほどける場所。私には、その両方がある。あーよかった。鼻歌まじりにそうつぶやいて、上野へ行く支度をはじめた。今日もきっと、楽しい。

ペンネーム:湯気文吾(宮崎直哉)さんのサウナ&カプセルホテル 北欧のサ活写真
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