コロナ前後、ふらっと新規開拓で訪れたこの場所。正直そこまで期待していなかったのに、まさかのセッティングがどハマりで連日通うことに。
地元の人たちが足しげく通う理由がすぐに分かった。常連さん同士の会話も自然と弾む、あの空気感。湿度と温度のバランスは抜群で、水風呂もしっかり冷たい。露天も最高で、夕暮れ時の外気浴は本当にエモい。
ふと香る近くのやきとり弁当の匂い、外気浴後に浸かる露天の気持ちよさ、流れているBGMまで全部がちょうどいい。銭湯のお風呂もまた気持ちいい。
正直、民度は高いとは言えない。でも、それでも通ってしまう魅力がここにはあった。休憩室で一服できるのも含めて、全部込みで好きな場所だった。
そして今日で閉店。建物も取り壊されるらしい。最後の日はやっぱり混んでいたけど、それもまたこの場所らしい光景。
ありがとう。
今日は、最初からここへ行くと決めていた。4月29日にその歴史に幕を下ろす、50年の歳月を刻んだ単純性アルカリ温泉「鍛冶温泉」だ。
住宅街の奥まった場所に佇むその姿は、銭湯というよりは町内会館のよう。道沿いの看板を見落とせば、そのまま異次元に迷い込んでしまいそうな控えめな外観だ。
一歩足を踏み入れれば、そこは昭和のタイムカプセルだった。木札の下駄箱に、年季の入ったロッカー。現代の「100円リターン式ロッカー」が、ここでは最新鋭のハイカラ設備に見えてくるから不思議だ。診療所の待合室を思わせる休憩所の長椅子が、またいい味を出している。
暖簾を潜れば、そこは「ザ・銭湯」。阿部寛がいてもおかしくない『テルマエ・ロマエ』の世界か、はたまた『三丁目の夕日』のセットか。
あまりの既視感に、あとは壁に富士山のペンキ絵さえあれば、僕の昭和ノスタルジーは完全に爆発していただろう。
離れの露天風呂や、バスの待合室を思わせる約10人収容できるドライサウナ。これらはきっと、創業当時は最先端の「デザイナーズ銭湯」だったに違いない。
水風呂はチラーが容赦なく効いていて、深い浴槽で僕の体は一気にキンキンに冷やされる。
しかし、サウナ室の中は外気より熱い「人間模様」が繰り広げられていた。閉店を惜しむ声か、それともいつもの光景か、室内はまさに満員御礼。
一見さんお断りの場末のスナックに迷い込んでしまったような、常連客による濃密な社交場だ。新参者の僕が入り込む隙間は、物理的にも心理的にもわずかしかない。
そんなアウェーの中、なんとか3セットを完遂。「お邪魔しました」と心の中でつぶやき、居場所のなさを背負って、いつもより足早に最初で最後のサ活を締めくくった。
帰り道、五稜郭の桜が視界に入る。春の夜に散りゆくその花びらが、役目を終えようとする古き良き銭湯の姿と重なり、なぜかいつもより悲しげに見えた。
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