女
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50℃
朝のグランドメルキュール浜名湖。
目覚めは静かで、身体に重さはなかった。昨夜もこの場所でしっかりと休み、深く癒されたことで、蓄積していた疲労はすでに抜け落ちている。
その流れのまま、ほとんど間を置かず浴場へ向かう。
朝食の混雑する時間帯をあえて外したことで、浴室は驚くほど空いていた。広い空間に人の気配はまばらで、静寂がゆっくりと広がっている。
ただ、サウナ室の中には同じ発想の人間がいた。三人ほど。
朝のこの時間に、身体を整えに来る者同士。言葉はなくとも、どこか通じるものがある。
しっかりと熱を受け、水風呂へ。
朝の水は輪郭がはっきりしていて、身体の芯まで一気に引き締めてくる。
そのまま外気へ
——やはり、いた。
蚊。
昨夜だけの問題ではなかった。朝になってもなお、その存在は明確で、視界に入るほどに多い。静かに整おうとする意識を、何度も現実へ引き戻してくる。
それでも、完全には崩れない。
呼吸を整え、脈を感じる。
刺されながらも、身体は確かに整っていく。
完璧ではない。だが、それでも十分だった。
疲れがない状態で迎える朝のサウナは、どこか純度が高い。
余計なものが削ぎ落とされた状態で、自分の感覚だけに集中できる。
その感覚を携えたまま、今日という一日に向かう。
夕食後の余韻が、まだ身体の奥にゆっくりと残っていた。満ち足りた腹と、わずかに残るアルコールの気配。その重さを抱えたまま、再び浴場へと足を運ぶ。
夜の空気は、昼間よりもわずかに静かで、落ち着いている。サウナ室の扉を開けると、相変わらずの熱が迎えてきた。無駄のない熱さ。しっかりと身体に入り込んでくる、約90度の圧。
淡々と汗を流し、水風呂へ。温度は特別低いわけではないが、十分に身体を締めてくれる。そのまま外へ出て、整い椅子に腰を下ろす。
夜風は悪くない。むしろ心地いい部類だ。
——ただし、蚊さえいなければ。
腕、足、首筋。意識を沈めようとするたびに、どこかが刺される。完全には集中しきれない。それでも、断続的に訪れる“整い”をなんとか拾い集めるように、身体を預けていく。
整い椅子も、頭までしっかり支えてくれるタイプではない。どこか中途半端な姿勢のまま、重心を探る時間が続く。それでも、不思議と感覚は整っていく。
完璧ではないが、成立はしている。そんな感覚だった。
一通りを終え、浴場を後にしようとしたその時——ふと視界に入った。
サウナハット。
手に持っているだけで、被っているわけではない。ただ、それだけで十分だった。この場所に、それを持ち込む人間がいるという事実。
リゾート地のオールインクルーシブホテル。サウナはあくまで付帯設備として扱われることが多く、本気の装備で臨む人間は少ない。これまで何度も、「なんだこいつは」という空気を感じてきた。
だからこそ。
ただ“見かけただけ”の存在であっても、妙に印象に残る。
同じ時間を共有したわけでもない。会話もない。ただ、帰り際に視界に入っただけの、ほんの一瞬。
それでも、この場所にも確かにいるのだと、静かに実感するには十分だった。
小さな発見と、いくつかの不満と、それでも成立する整い。
そんな夜だった。
静岡・浜名湖のほとりに佇む
グランドメルキュール浜名湖
久々の休暇を預ける場所として選んだのは、オールインクルーシブという“何も考えずに身を委ねられる環境”だった。
ここ半月休みなく働き続けた身体は正直なところ限界に近い状態。だからこそ今回は、意識的に何もしない時間を作るために足を運んだ。
15時にチェックイン。
ラウンジで軽くアルコールを流し込みつつも、あくまで“整いの前段階”として控えめに。余計な酔いを残さないように調整してから、浴場へ向かう。
サウナはおよそ90度前後。しっかりとした熱量で、疲労の蓄積した身体にも容赦なく熱が入ってくる。タオルを敷くスタイルではないが、ビート板タイプのサウナマットが用意されており、最低限の快適性は確保されている。派手さはないが、しっかり“効く”サウナという印象。
水風呂はおそらく水道水ベース。特別に尖った冷たさではないが、熱を受けた身体を確実にリセットしてくれる温度帯で、じわりと芯まで落としてくる感覚がある。
外気浴は、浜名湖エリア特有の穏やかな空気感も相まって、過剰な演出がなくとも自然と整う。観光地のホテルサウナでありながら、最低限以上の“サウナとしての成立”はしっかり感じられる。
そして今はビュッフェ会場。
しこたま食べながらこの文章を書いているが、この“何も気にせず食べて、またサウナに戻れる”という循環こそが、この施設の最大の価値だと感じる。
このあと第2ラウンドへ。
回復途中の身体に、もう一度しっかりと熱を入れていきたい。
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